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俺には完璧な父がいる

2012.05.19 09:47|いっちゃんの家族
まさかの第二弾(笑)
これも少し前に書いた駄作です。
とりあえず入江くんと琴美を出そうと思いました、という作品。



*  *  *






―――俺には、完璧と言っていい父がいる。
誰もがそう言うのだからきっとそうなのだろう。


俺からしたら、父以外の何物でもないのだが。
医者として働いている姿も実はしっかりと見たことは無い。
いつも他人の言葉で「すごい」「すばらしい」と聞くばかりだ。
父はそれを鼻にかけるとかそういったことはない。
だけれど真顔で「俺がやるんだから成功するのは当り前だ」とも言い放っている。


天才だか何だか知らんが、父さんには謎が多い。
べらべらしゃべったりはしない。
怒っていたり冷たいわけじゃないのは、わかっているけれど。

だけどうちの父には、意外な一面もある。










父さんが長期の出張になったのは、先月のことだった。
学会がどうとか、ああとか。
頭の悪い俺には全然わからなかったが、隣にいる姉さんは頷いていた。

問題は、母である。

「一か月も!?」

母さんは顔を真っ赤にして、やだやだと主張する。
うちのおばあちゃんも一緒になって父さんを責める。
もちろんそれはいつものことで、父はそんな母たちに聞く耳も持たない。
姉は「もう諦めなよ」と母を諫めている。
なんだかどっちが保護者だかわかりゃしない。
俺はそれを傍観しつつ、少し味の薄いみそ汁を啜っていた。

母さんがどうあがこうとそれが撤回されるはずもなく。
父さんはちゃんと出張に出かけていった。

きちんと支度をしていたあたり、ある程度の納得はしているらしい。
仕事だから仕方ないとちゃんとわかってはいるのだろう。
そりゃわかってもらわなくちゃ困るよな――こんなにでかい子供が2人もいる母親なのだから。



「ママって本当に、いつまでもパパのこと大好きよね…」

ちょっと呆れた顔で、姉は苦笑いをしている。
その言葉に意義は無い。確かにその通りだと思う。

早く帰ってきてよね、だの。
浮気しちゃ駄目よ、だの。
電話しても怒らないでね、とか。

そんなやり取りでしつこいくらい食い下がる母。

「あー、パパかわいそう」
「慣れてるでしょ」

俺がそう言うと、ちら、と姉はこちらを見る。
なんとなく、ぎくりとする。
姉の目は、怖い。
父さんの目も、時折何もかも見透かしているようで怖いと思うけれど―――姉さんはもっと怖い。
年が近いせいだろうか。

「―――私、部屋戻るから」

に、と口元だけで笑って、階段を上がって行く。
俺はいまだに父に食い下がる母を見る。

仲が悪いわけじゃない。
うちの両親は。

母がとっても素直すぎて。
父がとっても素直じゃないだけ。
















「母さん、ほら、起きなよ」
「ぅん…」

夜、下に降りると、ソファの上に母さんが座っていた。
こくりこくりと頭が揺れている。
どうやらテレビを見ながら眠くなったらしい。

パジャマの上にストールを羽織っているものの、こんなところでは風邪を引いてしまう。

いつもはこんなことはなかった。
もちろんこれは、父がいないからだ。
父さんがいないから、1人で広い寝室にいるのは寂しいのだろう。
父は医師なのだから当直でいないこともしょっちゅうだったはず。
それなのにこんな状態なのは、やはり病院でもどこでも会えないからだろうか。

母はしつこいくらい父にメールを送っているらしいが、あの父がまめにそれに返信するとはとても思えない。
きっとたまにかかってくる電話が返事なのだろう。

「……りぇくん…」

寂しい声。
母さんのこういう声は苦手。
何だかとても気恥ずかしくて、こそばゆい。

「母さん!」

その瞼を開いてほしくて―――ゆさゆさと揺らす。
いない父さんばかり見ていないで、もう少し現実を見てもらわないと。
大きく揺らしすぎたのだろうか。
母さんの身体がぐらりと傾いて、すーーっと、こちらに倒れてきた。

おっと、とそれを支える。
さすがに起きただろうと顔を覗き込むと、その目が微かに震えている。

「―――こんなとこに寝てると…」

そう言いかけた時。

ぎゅ、と。


「……っはあ?」
「いりえくぅううん!」

ぎゅううっと背中に回る腕。
俺は突然のことに驚いて、その場に思わず尻もちをついてしまう。

「かっ、かあ―――」
「むにゃ…いりえくん…」

すりすりすり。
寝ぼけて人の胸に頬ずりをする母親。

顔が熱い。
何やってるんだよ、母さん!
そう叫びたいけれど叫べない。

「…すぅ…」

母さんがとても幸せそうに眠っているから。

―――なんで、こう。

母親をこう形容するのはきっとおかしいけれど。
でも、もし、俺が。
俺が父親の立場だったら。

『かわいい』って思うんだろうな、と思う。


「……だいすき…」

自分に向けられたものでもないのに、顔が熱くなる。
この恥ずかしさも知らない無邪気な寝顔が憎らしい。


いつまでも、幼くて、かわいらしいうちの、母さん。
困ったもんだと―――思うのだけれど、やっぱり憎めなくて。


男に比べてふにゃりとやわらかいからだ。
そろそろと腕を伸ばして、ぎこちなくぎゅっと抱きしめてみる。


「……ふふ、……えへへ…」


夢の中では、父さんに抱きしめられているのだろう。
せいぜいご機嫌になるといい。

「こんなんだから…マザコンって言われるんだよな…」

そう思いながら、その柔らかいからだはしばらく離すことができない。
母さんのにおい。ぬくもり。
少し懐かしい、感触。
母さんは昔よく、抱きしめてくれた。


――まあ、いっか。

その時の俺は、たいして深く考えなかった。





















「うっふふ~」

鼻歌が聞こえた。
あと一週間で父さんが帰ってくるという、とある週末。
母さんはうきうきと部屋で服をまとめていた。

「あれ、母さん、でかけるの?」
「あっいっちゃん♪」

ぱあっと笑顔になって、こちらに近づいてくる。

「あのね、あのね、聞いてっ!入江くんがね、入江くんがねっ」
「父さんがどうしたの?」

この様子じゃ悪いことではないだろう。少なくとも母さんにとっては。

「こっちに来れば、って言ってくれたのぉ」
「…こっち?出張先のこと?」
「うん!少し日程が早まって学会が早めに終わりそうなんだって!だから空いた時間、あたしが向こうに行ってもいいみたいなの!入江くんがデートしてくれるって!」
「父さんが?」
「えへへっ旅行みたーいっ、こういうの久々だなぁ」
「何かの間違いじゃない?父さんがそんなこと言うなんて…母さん幻聴じゃないの?それ」
「ううん!あたしこの耳でちゃあーんと聞いたもの」
「そう…」
「だからちょっと留守にするけど、ごめんね」

両手を合わせて、母さんは言う。
そんなうきうきで言われてもちょっとな…。
しかも子供の目の前で。ま、それが母さんなんだけど。

しかしあの父さんが。
珍しいこともあるものだ、と思う。
母さんが言いだしたならともかく、父さんからそんなことを提案するなんて。
何かあったのだろうか。いや、台風でも来るんだろうか。

「母さん、母さんの仕事は大丈夫なの?」
「あ、それがね、何故か休暇の申請がすんなり通ったんだよね~、うふふ、やっぱり日ごろの行いがいいからかなぁ」
「……?…ふぅん」

何かおかしい。
絶対何かおかしい。


ご機嫌な母さんをその場に残して、俺は居間へ向かう。
そこには暇つぶしに『臨床心理学の基礎知識』とかいう分厚い本をぺらぺらとめくっている姉の姿があった。



俺は、姉が苦手である。
姉さんは父さん譲りでとても頭が良い。
見た目は母さんによく似ていて―――幼い。
だけれどその瞳がふいに父さんのように鋭くなるときがあって、そんなとき俺はいつも背中に冷や汗を感じる。
俺が嘘をついたり、何かを隠したりしている時は特に、見破られるような気がするのだ。


お茶でも飲もうかとキッチンに向かうと、姉さんが急に口を開く。

「ママ、うきうきだったでしょ」

視線は本から動かすこと無く、淡々と言った。

「あ、あぁ」
「何でだと思う?」
「え?」
「どうしてあのパパがあんな提案をしたと思う?」

俺が姉を見ると、姉はようやく顔を上げてにこっと笑う。
その笑顔は本当に母さんに似ている。

だけれど、俺は何故だか怖い。

「さあ…俺にはわからないけど…きまぐれとか―――」
「夢だって」
「……へ?」

その瞳が、細められる。

「ママね、夢見たらしいの」
「ゆめ…?」

ぱたん、と姉さんが本を閉じる。
そして居間のソファから立ち上がった。

「パパに抱きしめられる夢を見たんだって。しかも、昔のパパ。詳しいことは聞いてないから私はわからないけど、どうやらパパはその話を聞いてあんな提案をしたみたいよ」

俺はよく理解できずに、首を傾げた。
母さんが何事も父さんに報告するのはいつものことだ。
そしてそれをいつもあしらうのも父さんで―――母さんにそんなことを言われたからってすんなりそんな提案をするなんて意外だった。
父さん、具合悪いんだろうか。何か向こうであったんだろうか。
そんなことを考えてると、ふっと姉さんが笑った。

「私の推測なんだけど」

居間のドアに手をかけて、姉さんは言った。

「ママは夢だと思ってるけど―――本当は夢じゃなかったんじゃない?」






にいっと口元が上がって、その瞳が俺を捉える。
ぞくぞくっと寒気がして―――ようやく俺は姉さんの言いたい意図を知る。

「私にもわかったんだから、パパには絶対わかってると思うよ」

くくっと笑って、姉さんは居間を出ていった。
ぱたんと閉じられたドアを俺は茫然と見つめる。
どくんどくんと何故か心臓が大きな音を立てていた。



母さんはあのときのことを夢として覚えていて。
それを能天気に父さんに(たぶんうっきうきで)伝えて。
その言葉のあれこれから―――それが現実であったと父さんは察して。
それで母さんを呼び寄せた?

―――それじゃまるで。

「……はあ」

俺の父は、意外にも―――ちょっと子供っぽいところがある。
こうやって自分の実の子から母親を奪おうとするなんて、ちょっと変わっている。
あのクールで感情を表に出さない父からは想像できない。
俺と母さんがどうこうなるなんて有り得ないし、そういうことを心配してるわけでもないのに―――。

「ただ、きっと面白くないだけなんだろうな…」

そういうところが、特に意外なのだが。
父さんのこんな感情が向けられるのは、後にも先にも母さんだけなのだろう。


俺は先程まで姉が座っていたソファに座りこむ。
父が帰ったら、何を言われるのだろうか。
あの2人が組んだら、怖いものなど何もないだろう。


母さんがいないところで、父さんと姉さんが俺に『マザコン』とぶつぶつ言う姿が浮かんで―――俺は今からちょっと頭痛がしたのだった。










( 素直じゃないくせに ほんっとに心が狭かったりするんだ )













入江くんの心の狭さを書こうと思ったのに、なかなか難しいです。
入江くんはあまり子供に嫉妬したりするイメージがないのですが、見えないところでいろいろ裏工作しているといいなあと思った願望です。そしてこの程度(汗)
お目汚し失礼しました。
もうこれ以後は書きためてないので…また更新が伸びるかと思います。すみません…。

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Author:嘉村のと
素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

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