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あたしのまほうつかい

2012.02.22 22:11|短編

ほんっとーに今更なんですが。
思いついたんで一気に書いてみました。

バレンタインネタです。
甘さ皆無ですが、お暇つぶしにどうぞ。

久々に普通のイリコトを書きました…。
変な話ですけど。

*  *  *




ぐてん、とその場に横になる。
家中に広がった甘い甘いカカオの香り。
好きなはずの甘い香りも、何だか今は悲しいばかり。


「……はぁ」


ちゃんと綺麗に作ろうと思っていたのに。
今度こそうまくいくようにと何度も本を読んだのに。

横になったままなので、天井が見える。
相変わらず何もかもへたくそで、悲しくなる。

こんなに頑張って、頑張って、頑張ってるのに。
本当に作りたかったものは何一つできないのだ。

「……なんでかなあ」

冷たい床が、今は心地よい。
疲れているせいで眠ってしまいそう。

でも、片付けはちゃんとしないと。
彼女はそう思って起き上がろうとするけれど、動けない。

目を閉じて思う。


魔法使いが現れて、私を助けてくれたらいいのに―――と。
















バレンタインのチョコレート。
手作りはやめておきなさいと散々周りには言われているけれど、それでもやっぱり作りたい。

買った方がおいしい。
買った方が綺麗。
そんなの、わかっているけれど。

それでも、彼女は作りたいと思った。

チョコを刻む。
それを溶かす。
固める。

そんな簡単なことすら失敗している。

哀れ、チョコ『だった』物質。

つくづく才能がない、と思いつつ、彼女は起き上がって右の方をちらりと見る。
買ってきた材料のチョコの5分の1の分量にも満たない、完成品。
見た目は、ひどく不格好で。
味は―――未確認。
こんなものはあげられない。


大きなため息をつく。


「―――大丈夫だよ」

優しい声がする。
彼女は顔を上げる。

そこには見知らぬ少年が立っている。

「―――え…?」
「僕が魔法をかけてあげる」

彼がその小さなステッキをくるくると回すと、きらきらとした粉が辺りに舞う。
彼女がそれを見上げていると、彼女の不格好なトリュフは―――とても綺麗なトリュフに変わる。

「え?ええっ?」
「いつも君はがんばっているから、僕からのご褒美だよ」

彼女はそのトリュフとその少年を交互に見る。
少年はにこにこと笑って、あたりに散らかっているチョコの方にもステッキを振った。

散らかっていた場所も、焦げていたチョコも。
その綺麗な粉を浴びると――たちまち綺麗になって。
汚れていた食器は綺麗に。
チョコは他のチョコ菓子に、生まれ変わる。

「すごい…」
「ねぇ、一口食べてみて」

その少年がチョコを差し出す。
彼女は頷いてそのチョコを口の中に入れる。

「……おいしい…」
「良かった」
「ありがとう!あたし、もう諦めてたの…嬉しい!」
「いいんだよ」

少年が首を振る。

「いつも見てたよ、うまくできなくても、何度も挑戦する君を」
「え…」
「さあ、あとはラッピングだ」

今度はどこからともなく箱が現れた。
小さくてシンプルなデザインの箱。
その中にかわいらしくトリュフが詰め込まれていく。
綺麗に収まると、蓋が閉まり―――リボンがするすると巻かれていく。
やがて綺麗なブルーのリボンが箱の上にきちんと結ばれた。

「かわいい!」
「さ、持って」

ふわりと、彼女の手の上に置かれる。

「これを、君の大好きな人に届けに行きなよ」
「―――ありがとう!うん!あたし、がんばる!」

彼女は頷く。
嬉しくて嬉しくて、にっこりと笑う。
少年も彼女のそんな様子に微笑む。

彼女はその箱を大事に持って、そっと歩き出す。
見れば見るほど立派なチョコである。
味は申し分ないし、箱もかわいらしい。

おいしくできるはずないとバカにされているけれど――今回ばかりは見返してやることができるんじゃないか。

そう、思って、立ち止まる。


「………」
「…どうしたの?」
「―――…」

彼女はその箱を、穴があくほど見つめる。

「……駄目…」
「え?」

彼女は踵を返し、その少年に向き直る。
そしてまっすぐな瞳で言った。

「これじゃ、駄目…駄目なの」
「どうしたの?何か気に入らなかった?」

彼女は首を振る。

「とっても嬉しいけど、でもこれじゃあ、あたしのチョコじゃないよ」
「キミの、チョコ?」
「あたし、今回自分で作るって決めたの。それなのに、あたし挫折してる。これじゃあ、胸張って渡せないよ」
「……―――君の、さっきのチョコのほうがいいって言うの?」
「…そりゃ、あたしのチョコは酷い出来だけど。あなたに頼ってしまったら、駄目な気がするの」
「君はいつも一生懸命頑張っているから、そのご褒美だって言ったよね。いわばこの恩恵は、君の努力の結果だ。そう言えば、受け取ってくれる?」

少年は強い口調で言う。
彼女は再び、首を振った。

「―――あたしは」

その瞳は、揺らがない。

「あたしはまだまだ、がんばれるよ」


まだ、行ける。
まだ、がんばれる。

まだ―――諦めちゃいけない。


「あたしの力で、美味しくしなくちゃ。堂々と渡したいの、あたしの気持ち」




世界が、ふわりと霞む。
うっすらと白くなって――――やがて消えていく。

だけど、その少年は少し嬉しそうに笑っていた。






















「――――…こ」
「……」
「琴子」
「………ふあっ!」

彼女はがばっと起き上がる。
不機嫌そうな彼の顔が彼女を見下ろしている。

「床で寝るな、びびるだろ」
「あ……」

あちこちを見る。
横になって、ぼんやりとしていたら途中で眠ってしまったらしい。
背中が少し痛くなっていた。

「んん…」

背伸びをして、時計を見る。
日付が変わっていた。
今日はバレンタインデー。
テーブルの上は錯乱したまま。
キッチンも散らかったままだ。

「よくやるよな、お前も」
「えっ?」
「いらねーって言ってるのに」

蛇口からコップに水を注ぎ、彼は軽く口付ける。
彼はバレンタインなどに全く興味を持たない人間だ。
もう結婚した後となれば尚更、さらに気にしないらしい。

「……うん、そうだね」

彼女は苦笑いを浮かべる。
たとえ欲しがられていなくても、あげたいのだから仕方ない。

いつまでもいつまでも。
こうやって彼のためにチョコを作りたいと思うこと。
あげたいと思うこと。

―――伝えたいと、思うこと。

それが、本当は嬉しい。


終始ご機嫌に笑う彼女を、彼は相変わらず呆れたような目で見る。

「早く寝ろよ、起きれないぞ」
「うん、でももう少し」
「何度やってもうまくいかないと思うけど」
「そんなことないもん!」

握りこぶしを作って、彼女は主張する。

10回やって駄目でも。
20回やって駄目でも。
それでも、まだ進めると思う限り―――。

「入江くんに『すっごく美味しい』って言わせるくらい、おいしいチョコ作ってみせるんだから!」
「へえ?甘いものが嫌いな俺に、『美味しい』ねぇ」
「そ、そーよ!壁は高いほうが燃えるのっ」

ふっ、と彼が笑う。

「―――なるほどね、じゃあ、いいぜ」

それは彼が良く見せる意地悪な笑みで、彼女はドキリとする。

「もし俺を『美味しい』って言わせたら、お前の願い事何でも1つ叶えてやるよ」
「………――――っええっえええ?」

彼女は深夜ということも忘れ、叫ぶ。

「なんでもいいの?それってデートとか食事とか買い物とか旅行とか―――」
「ただし」

彼はぴしゃりと彼女の言葉を遮る。

「言わせることができなかったら、俺の言うこと何でも1つ聞いてもらうから」
「……………え?」

彼女はきょとん、と首を傾げる。
言っていることがよくわからなかったらしい。

「入江くんの、お願い事?…ってなに?」

全然想像がつかず、彼女は頭を悩ませる。

「お前、もう負ける気なのか?」
「そっ、そんなんじゃないよ!そうじゃなくて…」
「お前の嫌がることに決まってるだろ」
「え…?ええ?」
「そうだな、たとえば―――参考書を頭から全部模写するとか」
「………っ、ひ、ひどい!」
「勉強になっていいだろ」
「あっ、あたしにできるはずないじゃないのよぉお」
「―――まぁ、そうだな。お前にできそうなことも…候補がないわけじゃないけど…」

ちら、と彼女を見て、また意地悪な笑みを浮かべる。
彼女はちょっとドキリとして、それでもそれを見破られたくなくて、彼を睨んでみる。
少しだけ胸を甘い痛みが刺す。
これ以上は踏み込んではいけないような―――。

「ま、せいぜい頑張って」
「負けないもん!ぜ、ぜったい、負けないんだからっ」
「―――楽しみにしてるよ」

くくっと笑う。
おやすみと言って、キッチンから彼は出ていく。
その後ろ姿を見送りつつ、彼女はぎゅっと手を握り締める。


彼に美味しいと言わせられる確率とはどれほどあるのだろうか。
それがまた――彼女の不器用な手で、どれほど低くなるのだろうか。

それでも。

「―――がんばろうっ!」


彼女は嬉しいと思う。

まだ、頑張れる。
彼女が頑張って、頑張って、また頑張って。
その頑張った先に―――きっと。



最高のご褒美が、待っているのだから。







( あたしを何度でも立ち上がらせる そんなあなたは魔法使い )




























…わかりますか?意味…。
これも本当にわかりにくい話だなーと思いました。
バレンタインにはだいぶ過ぎてしまいましたが、ふと思いついたので。
やはりうちのイリコトバレンタインには甘さなど皆無ですね…。
しばらくオリキャラばっかりかいていたせいで、イリコトがぎこちない…ような気がします。
結婚前にするか、後にするか少し考えたのですが、後に。
だって前にするとやっぱり入江くんが出番皆無なんですもの。

彼女にとっての最高のご褒美は、『彼が受け取ってくれること』『彼が食べてくれること』です。
彼女の栄光なんです。そんなささやかな2人が好きなんだいっ!

入江くんのお願い事は皆さまのお好きな願い事を想像してください。
うちの入江くんはなかなか本音を出しませんからね。
えーえー本当に素直じゃありません。まぁ向こうから言いだしたんですからね、彼は負ける気はないでしょう(笑)
それでもきっとバカップルで終わるんじゃないですかwえへw
来年も頑張って←

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コメント:

拍手レスです

あやみくママさん
>>…さっすが(笑)まいりましたm(_ _)mさすがにそれじゃあ入江くんもおいしくいただくしかできませんねw
そうすると逆にホワイトデーに何がお返しでくるのかかなり気になるのは私が変態だからですかwwwどきどきw
拍手ありがとうございましたwおみそれしましたwww

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素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

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