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恋かもしれない35題 11「悲しい日」

2011.12.16 21:16|お題
琴子ちゃんしかでてきませんが…。
なんだか悲しいっていうよりむかつく日かも(私にとっては)


*  *  *








もしもそこに、あなたがいなかったら。







「へえぇ」

目を輝かせて彼女を見つめる、若いナースたち。

「琴子さんって高校生の頃から入江先生と同居されていたんですか」
「うん、まぁ」

はにかみながら、琴子は笑う。
彼女を囲む女、女、女。
視界の隅にそれを見つけ、桔梗はまたやってるわと思った。

「ちょっと琴子!こっち手伝いなさいよ」
「あっモトちゃん」

桔梗の姿に気付くと、彼女はぱあっと明るい顔を見せる。
ごめんと言いながら琴子は桔梗のもとへ駆けて行った。

「また質問攻め?」

桔梗が尋ねると琴子は頷く。

「うん」

直樹との出会いや慣れ染めを聞かれれば、意気揚々と答える琴子である。
だけれどはっきり言って―――彼女たちの興味は2人と言うより直樹のことである。
その意図を理解する桔梗は、その女たちの目的に気付かず答える琴子がなんとなく不憫だと思う。

隣でにこにこと笑っている琴子を見る。

「バカって得よね…」
「ん?何か言った?」

いーえ、なぁんにも、と。
桔梗はその長い睫毛を伏せながら笑って見せた。
















「今日はお弁当作ってきたんだ、もちろん入江くんのぶんもっ」
「可哀想な入江先生」
「んもー!モトちゃんってば!」

ぷんぷんと頬を膨らます。
だけれど手に持っているお弁当箱を見てすぐににこっと笑った。
直樹に持って行くつもりらしい。
彼が食べてくれるところを想像したのだろう。
わかりやすいものである。
桔梗はくすりと笑って、今にも医局へ突っ走っていきそうな琴子を止める。

「ちょっと待ちなさいよ、琴子」
「ん?なあに?」
「うちの詰め所の冷蔵庫に、この間アタシが買ってきたパウンドケーキがあるから持ってきなさい」
「えぇっ、いいの??」
「1つだけよ!入江先生のぶんだけ!」
「ふぇぇ」

ちょっと琴子は口を尖らせるも、嬉しそうだ。

「ありがとう、モトちゃん!」

きっと直樹のことだから素直に食べはしない。
彼女にあげるか、はたまた彼女の提案で半分こでもするのだろうか。
彼女の口にも間違いなく入るだろうとわかっていてあげるのだから、アタシもずいぶんあの子に甘いわねと桔梗は苦笑する。
ぱたぱたと走っていく背中に、「走るとまた怒られるわよ」と呟いた。














桔梗が言ったお菓子を取りに行くため、琴子は詰め所に向かった。
その扉を開けようとしたとき、聞きなれた単語が耳に飛び込んでくる。
思わずその手が止まる。

「有り得ないよね」

嘲笑。
くすくすと笑う、嘲りの声。
黄色い声たちの主は見なくてもわかった。

「あんな女が入江先生の奥さんだなんて」

あぁ、と琴子は思う。
今までいくらだって言われてきたことだ。

「看護師としても女としても全然尊敬できないもん」

早く立ち去ろう、と思う。
だけど足が動かない。

「この間お弁当見たらすごかったの、酷い有様」
「家事もできなそうだもの」

ぎゅっとお弁当袋を抱きしめる。

「入江先生と高校時代から同居してたって言うけど、親同士が仲が良いって得よね」
「ほんとぉ、うらやましい。私も入江先生と同居したいぃ」

きゃっきゃっと笑う声。

「押し倒して既成事実でも作っちゃったんじゃないのぉ」
「有り得るぅ」

あははと笑う声。
やけに遠くで聞こえるような気がする。

「…違うもん…」

彼女は唇をかみしめる。
そのドアを開けて踏み込んでやりたい、強い自分が現れる。
ドアにそっと手を掛けた。

「でもさ、近くにいると情が移るって言うし」
「かわいそうになっちゃったのかもねぇ」

また一層大きくなった笑い声。
彼女は手を下ろす。
そして、その足をゆっくり方向転換させた。
ぐっと唇を噛む。

しばらく歩いて―――彼女は走り出す。


2人の親同士が仲が良かったのは、彼女のせいではない。
もちろん地震が起きたのも、家が欠陥工事だったのも倒壊したのも、決して彼女のせいではない。
だから、思う。

同居は『宝くじにあたったようなもの』なのだと。
それでは―――結婚は。
こういう関係になれたのは、『宝くじ』なのだろうか。

いつもなら彼女は『違う』と言えた。





泣かないように、泣かないように。

彼のそばにいて、苦しいこともあった。悲しいこともあった。
諦めようと思ったことだって数えきれないくらい。

それでも、彼女は思い続けた。
その心が打ちのめされようとも、彼女はその強さで頑張り続けた。

だんだん、彼が、彼女を見てくれるようになって。
好きだと言ってくれて。
結婚しようと言ってくれて。

―――彼の気持ちを疑うわけじゃない。




それでも、とても悲しかった。

彼のそばにいて。
彼のこころに触れて。
そっと近付いて。

そうやって歩んできた全ての道が。

全て否定されてしまったような気がした。


あの場所にいたのが彼女ではなく。
彼女以外のひとがいても、同じことが起きたとでも言うのだろうか―――。












詰め所では、まだ笑いが響いていた。

「あんなに素敵なひととずっといれるなんて、最高だよねぇ」










( 彼の何を 知っているというのでしょう )








自分で書いておきながら、この女狐ども腹が立つ(笑)
続きます。
だけどうちのイリコトでは入江くんは全然動いてくれません。ごめんなさい。

ただ言いたいのは、結局この女狐たちは入江くんのこと、何ひとつ見えてないのですよね。
そしてもちろん、琴子のことも見えていないのです。












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コメント返信

あやみくママさん
>>で・す・よ・ね~~~。
自分で書いておきながらすごく気分を悪くしていました(←なら書くなと言われてしまいそうですが…)
是非是非、彼女たちをどんどん見下してやってくださいませww
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素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
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