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恋かもしれない35題 03 「たとえばの話」

2011.08.02 21:25|お題
恋かもしれない35題から03「たとえばの話」です。

たとえば、というテーマは書いてみたいものがいっぱいあって、逆に苦戦でした。

よろしければどうぞ^^




  *   *   *
たとえば、あたしが高校に受からなかったら。
たとえば、あたしが告白をしなかったら。

たとえば、地震が起きなかったら。
たとえば、同居なんてすることが無かったら。
たとえば、家族ぐるみであたしをこんなに押してくれなかったら。


たとえば。

たとえば。

たとえば―――。











「運命ってすごいね」

「何だよ急に」

「だって、まさかあたしが入江くんの奥さんになるなんて、すごくない?」

「よく言うよ」

お前が切り開いてきたんだろ、と言うと、まあね、と琴子は肩をすくめる。
長い髪がふわりと揺れて、乾いたばかりのシャンプーの香りがした。

「だって、全然信じられないんだもの」

同じベッドで寝て起きる生活を送っているというのに、彼女は相変わらず初々しいまま。
本から目を逸らさずに直樹はつれなく答える。

「何だよ、また何か言えってか」

「そう言うんじゃなくて…ほらさ、もし地震が起きなくて、家が崩壊しなくて、同居しなかったら、絶対絶対ぜーったい入江くんとは結婚できなかったような気がするんだよね」

「だろーな」

う、と彼女は口を尖らす。
できれば『同居しなくてもいずれこうなってた』ぐらい欲しかったが、それを彼に期待するのは無理だろう。

「良かったな」

「え?」

「家が崩壊して。地震があって。同居できて。俺はまんまとその運命とやらに負けたようだ」

「うっ、何よその…まるで災難みたいな…」

「災難だな」

「…ひっ、ひどい!…そりゃ、入江くんはそうかもしれないけど」

彼女はそう言って、口をつぐむ。

もし、彼女がこの家に来なかったら。
沙穂子のような素晴らしい女性と出会い、結婚していたのだろうか。

胸がきゅうっと締め付けられるような痛み。
彼女はしょんぼりとして、自分の膝を抱えた。



―――たとえば、入江くんと私が会わなかったら、入江くんは今頃どんな生活を送っていたのかな。
綺麗で優しくて、料理上手でスタイルも良くて、気立ても良くてお裁縫も、料理だって完璧で…。

そんな奥さんがいて。
医者になっても、会社を継いだとしても、忙しい彼をしっかり支えて。
外に出れば「お似合いです」「素敵な御夫婦」と道行く人は振り返って。

その姿があまりにも簡単に想像できて、彼女は自分の想像力が憎らしい。


「おい」

「へっ」

「何ニヤニヤしてるんだ」

「にっ、ニヤニヤなんてしてない!あたしは…もしっ…」

ニヤニヤなんてしていない。
確かに妄想してはいたが、それは楽しい妄想ではなかった。

「もし?」

「―――っ、なんでもない!おやすみ」

彼女は彼を睨んで、ベッドにもぐりこむ。

――ふんだ、ふーんだ!
どうせあたしは災難ばかり巻き起こすトラブルメーカーだもん。
いつだって入江くんの足を引っ張ってばかりで助けてもらってばっかりで。
…本当は、もっと、ちゃんとした奥さんになりたいのに。



彼が本を閉めた音と、かちりと電気が消された音。
小さいため息が聞こえた後、ベッドが揺れて彼も中に入ったのがわかった。

「琴子」

小さな声で呼ばれて、彼女は反射的に声のほうを見る。
暗闇の中でも、目があったのがわかって。
その条件反射のような行動に、彼の口角が少し上がった。

「もし、俺がお前と出会わなかったら―――」

彼の手が、彼女の前髪をさらさらと梳いた。
もう片方の手が彼女の背にまわされて、強い力で引き寄せられた。

おやすみのキスにしては濃厚なキスが落ちてくる。

「んっ、いりえ、く…」

「こんな感情、知らないままだったろうな」

―――こんな風に。
他人を愛せるなんて知らなかった。

「入江くん…?」

よくわかっていない彼女に、彼は再びくすりと笑った。
そしてまたキスを落として行く。

言葉にするには、少し難しすぎるから。
この気持ちが少しでも彼女に伝わればいいと思いながら。

熱っぽい吐息がこぼれ始めた彼女に、彼は小さな声で呟いた。



「運命に感謝してるよ」








( もし君に出会えなかったら こんなにも幸せになれなかった )












  *   *   *


神がかり的な力で出会い、結ばれたこの2人。
まさに運命と言うか。
でもご都合主義な感じはしないのがこの作品のすごいところだと思います。
むしろ琴子のはちゃめちゃなパワーが愛しいw
まさに切り開いてきたと言っても過言ではありません。
多田先生には敬服いたします。

背景には琴子の根性と努力があるのでしょうね。
あのまっすぐさと強さにいつでも驚いてしまいます。
だからこそ、入江くんの言う「10%」をやってのけても納得してしまう。
他のことが何もできないからこそ、それに価値がある。
ここまで不器用で何もできないヒロインはなかなか見たことはありませんでしたが、だからこそ時折起きるその「10%」が素晴らしいと思うのです。

大好きだなぁ琴子www
今回はうちの入江くんにしてはちゃんと言葉にしてくれました。










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拍手れすです☆

Foxさん
>>ありがとうございますw
あちこちに拍手してくださったみたいでとても嬉しいです。
「たとえば~」は自分でも好きな作品のひとつでして、そう言っていただけて嬉しいです。
おっしゃりたいこと、わかりますよ~(^^)私も自分でうまく説明できませんが、2人が出会えたことは本当に幸せであったと思いますww
拍手ありがとうございましたw
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Author:嘉村のと
素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

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