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恋かもしれない35題 08「合図」

2011.12.09 23:13|お題
お久しぶりです。
時間的余裕はあって、しかも書きたいのに、なーーーんにもうまく書けない日々をおくっておりました(笑)
13行ぐらいのボツばかりが増える日々…再利用価値くらいあればいいのにぃ。
そういう日々って辛い!自分の無力さがひしひし…。
今日、急にこのお題で思いついたので、勢いで更新しちゃいます…。


青いイリコトなのですかっ?…これは…(汗)



*  *  *




残暑の強い日差しに、きらりと反射する。
空高く上げられた黒いピストル。

「位置について」

彼女はそれを強く見つめている。

どきどき。

緊張する。
あと何分かしたらバトンは彼女のもとへやってくる。

負けるもんか。
負けるもんか。
あんなこと言う人間に負けるものか。

ぐっと奥歯を噛みしめて、彼女は思う。



―――ぱぁん、と。
スタートを告げる合図が響いた。

















「すごく速かったね」

心がすっとしていた。
バトンのとんでもないミスとか、走って来た彼の前に飛び出すとか。
そういう出来事があったにも関わらず彼女はご機嫌だった。

それに加えて、F組の完全優勝は無くなったのだ。
それでも彼女は何だか心がほかほかとしていた。
あんなに負けたくないと思っていたのに。
人を見下すような発言をする彼をやり込めたいと思っていたはずなのに。

「ふふふ」
「耳元で笑うな、気味悪い」

ゆらゆら、揺れる、彼の背中の上。
彼に運んでもらっているからだろうか。
もちろんそれもあるけれど、彼女は何故か誇らしい気持ちだった。

「さすがだね、入江くん」

これがあたしの好きなヒトなんだよ、と彼女は自慢したい気持ちになる。
彼は全速力で走ったのだから。
その彼に負けたのなら―――彼女はそれで構わなかった。



3位から1位へ巻き返せるほど足が速いんだよ。
本気になれば、誰にだって負けないの。
金ちゃんにだって100M走でも本当は勝てた。
そう―――本気になれば。



「ふん」

彼はつれなく言い放つ。
自分が勝つのが当り前だと言わんばかりに。
彼女はそれを聞いてさらに笑顔を浮かべる。

そう。
彼は勝てるのだ。
何でもできるのだ。
他の人間がどうあがいてもできないようなことを、することができるのだ。

琴子はそれがとても嬉しい。
恋人でも無いのに、自分のことでもないのに。
それでもとても誇らしく思う。

「運んでくれるなんて、入江くん優しいね!」
「落としてやろうか?」
「ひゃああ、やめてぇ」

ぱっと離そうとすると、彼女は悲鳴を上げて彼にしがみつく。
その必死さが何だかおかしくて、彼はくくっと笑う。
からかわれたことに彼女はむっとしながらも、すぐに表情を戻す。

「入江くん、体育祭どうだった?」
「どうだったって?」
「楽しかった?」

あたしは楽しかった、この3年間の中で一番楽しかった、と彼女は言う。
彼は少し黙る。

「そうだな、一番印象には残ったんじゃない?」
「本当?」
「お前が間違えてバトン渡したりとか」
「ひぃやああああ」

恥ずかしさのあまり、彼女は彼の背中に顔を押しつけた。

「もう忘れていたのかよ、さすがF組」
「…放っておいて下さい…」

がっくりとうなだれる彼女に、彼はまた意地悪く笑っている。

「おい、降りろ」
「へ?」
「さっさと降りろ。保健室に着いたぞ」
「…う、うん」

彼女は言われた通り素直に降りる。
そこは保健室のドアの前だった。
ここまで来たなら中まで運んでもらいたい。
だけれど彼はそこまで親切にはしなかった。

「じゃあな」

彼はすたすたと戻って行ってしまう。
その背中を見送りながら、先程まであの背中に触れていたのだと思うときゅんと胸が熱くなる。
今更ながら頬が熱くなった。

「…い、入江くんっ」

彼女は思わず呼んでいた。
彼の名前をとっさに叫んでいた。
彼はゆっくりと彼女を振り返る。

「なに?」

相変わらずあの切れ長な目で。
相変わらずいつも通りの冷たい目で。

それでも彼女の胸はどきりと高鳴る。

「……ぇと、そ、その、ありがとう、運んでくれて…」
「別に」

また歩き出そうとする。
彼女は少し慌てる。

「…あっあの…」

何かまだ伝えたいことがある。
そんな気がして―――彼女は何を言えばわからなくて―――とにかく発していた。

「…おめでと、…一着になれて…」


彼の足が止まる。
ふっとまた彼女を見る。

彼女にはそれは時間が止まったようにゆっくりに見えた。
本当はわずかな時間だったはずなのに。

彼の冷たい目が彼女をしっかりととらえていた。


何だろう。
彼女は思う。
―――言葉では言い表せない不思議な感覚。


ぺたぺた、と彼のスリッパが廊下を歩く音がした。
遠くなっていく背中。
彼は彼女の言葉に何も答えずに歩いていってしまう。

彼女はその場に立ちつくしたまま、それを見送る。
どきどきと胸が高鳴っていた。















誰もいない校舎から出て。
グラウンドに戻る通路を歩きながら、彼はぼんやりと空を見上げた。
久々に思い切り走ったから少し身体がだるい。

だけどそのだるさは、嫌なものではないような気がした。

『さすがだね、入江くん』

彼が今まで、何度も聞いてきた賞賛の言葉。
もう聞きあきたぐらいだった。
何をやってもすごいと、素晴らしいと、言われてきた。

それでも、耳元で彼女が弾んだ声で言ったその賞賛の言葉は。
今までのどんな言葉より、彼の心に不思議な感覚を与えたのは事実だった。



『負け犬の遠吠えよっ!』

いつの日か、皆、彼に挑むことをしなくなった。
どうせ彼には敵いっこないのだから。
手を抜いたとしても―――彼はそれなりにできた。
勉強も運動も、他のどんなことですら。



まだ残暑が残る秋の空は、蒼く。
彼は先程より低い位置にある太陽を目を細めて見つめた。




頬を染めて、慌てて言った彼女の顔が浮かぶ。

『…おめでと、…一着になれて』



「当り前だろ」
――だってこの俺が本気で走ってやったんだから。
彼はそう思う。



それでも一番『すごかった』のは。
彼と競えるほどの実力もない。
特に秀でたところもない。
それでも彼を本気にさせて、ここまで走らせた―――。
冷めきっていた彼に真正面からぶつかってきた彼女であることを。


彼はまだはっきりとはわからなくても。
ぼんやりとその事実をとらえ始めていたのでした。











( 彼女だけができる スタートの合図 )











体育祭のお話でした。
青いイリコト?ってかこれはイリコトなんだろうか…(笑)

昔は全然わからなかった、体育祭の後の琴子の嬉しそうな顔について書いてみようと思い立ちまして。

琴子が負けたくなかったのは、手加減している入江くんだったのではないかなあと。
でも本気を出した入江くんに負けるのは、きっと彼女にとって納得のいくことなのでしょう。
そして全速力で走った入江くんを見て、琴子は誇らしく思い、惚れ直していくのです。
リレーでは負けても、本当に勝ったのは琴子なのですよーw
なにせあの彼に本気を出させたのですから。

…この話も分かりにくいっ…。
入江くんの心の変化を少しでもあらわせてたらいいんですけど。


解説もっとしたいけど…それすらうまく書けないんです…。



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コメント返信です☆


minminさん
>>コメントありがとうございます♪
いつも読んでくださっているようで嬉しいです。
今回問い合わせのあった、あのパスワードの記事は私信であり、イタキスの小説などではありません。
とある方へのお手紙で使ったものです。
ブログをこういった個人的用事で使用して申し訳ありません…。
用件が済みましたら速やかに削除させていただきますので、どうかお気になさらず。
今のところ、パスワードがかかる作品は書いておりませんwいつかは書けたらいいなあとは思うのですが、そのときは改めてパスワードについての記事を書かせていただきますのでよろしくおねがいします♪

ちぇるしぃさん
>>こんばんは^^いつもありがとうございますw
いえいえ、青い入江くんは確かに「くそ生意気」という言葉がぴったりかと思います(笑)若い2人は意地を張り合っていて、面白いですよねw
でも琴子に優しくなってくれた入江くんも大好物ですが。えぇ、かなり大好きですけどw
「書けない」と散々騒いでいましたが、今日、うっかり鬼更新しちゃいました(笑)復活したわけじゃないんですけど、なんかもう勢いで←
心配してくださってありがとうございますwwこれからもぼちぼちがんばりますw


ひろりんさん
>>わー^^*ありがとうございます♪
最後のセリフでかなり補完したのですが、あの()内に食いついていただけると本当に嬉しいですw
毎回あそこ悩むので(笑)
入江くんが「頑張る」を知るのはきっとあのころじゃないかと思って書きました♪
ひろりんさんにそんな素敵な異名を付けてもらえて、恐縮ですw嬉しいですw
いつもありがとうございます☆

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Author:嘉村のと
素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

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