FC2ブログ

スポンサーサイト

--.--.-- --:--|スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

辿り着いた先

2011.11.06 22:41|短編
ギャグっぽくしようとして、結局いつもの自分仕様になりました。
琴子ちゃんの出番が少ないかもしれません。
ちょっと長いかもしれません。

*  *  *


「きゃあああっ」

ばたばたと彼女は駆けて行く。

「何だよ、騒がしーな」

裕樹がぶつぶつと文句を言うが、彼女はそれに答えている暇がない。

「きょ、今日、日直なんで、このままあたし行きます!」
「琴子ちゃん、気をつけてね」

にこにこと笑顔が眩しい紀子が、それを差し出した。

「…おばさま?」
「遅刻しそうな朝に女子高生と言えば、やっぱりこれでしょ」

お皿に載せられたトースト。
朝食を諦めていた琴子だが、ぱあっと顔を輝かせる。

「ありがとうございます、おばさま!」
「いってらっしゃーい」

お行儀が良いとは言えないが、何だか嬉しそうなのでいいだろう。
うちの恥だよと何故か最年少の少年がぼやいている。
彼女はトーストをかじりながら、玄関を勢いよく飛び出して行った。

「お兄ちゃんはもうとっくに出たっていうのに。琴子間に合うのかよ」
「あら、心配?裕樹」
「なっ別にそんなこと言ってない!僕も行ってきます」
「あらあらあら、行ってらっしゃーい」

手を振って紀子は裕樹を見送る。
琴子がいると、いつでも家は賑やかで明るい。

「あ、琴子ちゃんに言い忘れちゃったわ」

にこにこと笑いながら人差し指を頬に当てて、紀子は首を傾げた。
















彼女は勢い良く走っている。
走りながら食べるのはきつい、とマンガと現実の差をありありと感じつつ、とにかく走る。
このペースなら間に合うかもしれない。
全速力のせいで、少し痛んだお腹が辛いけれど―――。

彼女の視界に、彼の後姿が見えた。
長い長い下り坂。
勢いを落としながら、彼女はそれに向かって走る。

「入江くん!おはよう!」

できれば一緒に登校したいが、そういう時間の余裕は無い。
ただ休憩も兼ねて、少しだけペースを落とした。

「……お前、口から何か落ちたけど」
「きゃあああーーっ」

挨拶した瞬間にトーストは落下。
彼女は慌ててそれを―――普段から考えられないような反射神経で―――地面に着く前にキャッチして、危機を免れる。

「何そんなみっともないことしてんの」
「だ、だって、…うぅ」

腹話術が使えるわけないのだから、加えたまましゃべれるはずもない。
だから口を開いたら落ちるに決まっている。
彼女は残り少ないトーストを全て口の中に突っ込んだ。
これでもう落ちる心配は無い。
と、そうこうしている時間的余裕はなかったことに彼女は気付いた。

「ははしはきひひくね(あたし先に行くね)」
「何言ってるかわからないけどさっさと行け」
「はかったんはん(わかったんじゃん)」

不満そうな顔をしたけれど、でもにっこりと彼女は笑った。
彼が返事をしてくれたことが嬉しいから。
彼女はスカートを翻して、再び走り始める。

どんどんその姿は小さくなる。
たいした運動神経も無いくせによく持つものだ―――と彼は少し感心した目で見送ったそのとき。

「きゃあ」
「うわあっ」

彼女はちょうど曲がり角から飛び出してきた中学生とぶつかった。
ばさっとカバンが落ちる。
彼女は大きく後ろに尻もちをついた。
荷物まではばらばらにならず、彼女はほっとして、ぶつかった少年を見る。

「ご、ごめんなさい!あたし急いでて…」
「………」

少年はぼうっと、黙り込んでいた。
その様子を見て、彼女は一瞬知り合いかと思ったがそうではないらしい。
では怪我でもしたのだろうか。
彼女はあたふたと少年の目を覗きこんだ。

「あ、まさか…どっか怪我した?」
「あ!す、すみません、大丈夫です。俺もぼーっとしてて…」

その少年は慌てて立ち上がり、彼女もそれにならって立ち上がる。

「ほんとにほんとにごめんね!」

彼女はとにかく時間がない。
相手が怪我をしていないかもう一度確認して、再び走り出した。
少年も歩き出す。

その一騒動のせいで、直樹はその少年に追い付いてしまった。
なんとなく、もやもやした気持ちを持ちながらその少年を抜かす。
彼女の姿はまたしても小さくなっていた。
慣れない人間が、あんなに走ったら腹が痛くなるんじゃないだろうかと思うくらい。

「おはよう、見てたぞ、お前朝から災難だったな」
「え?ああ、今の?」

後ろから声が聞こえる。
その少年は―――どうやら同級生らしい人物と合流したらしい。

「すっげー音してたよ、痛かっただろ」
「確かに痛かったけど。でも、まあ、災難じゃなかったよ」
「え?」

ふっと声のトーンが落ちる。
急に息をひそめた。
聞き耳を立てるわけでもないのに、はっきり聞こえた。

「白」
「ぶっ!」
「今どきあれくらいの年齢で白って、逆にやらしいよな」
「お~い~、お前朝から何見てんだよ」

ケタケタと少年たちが笑っている。

「向こうが勝手に見せてきたんだよ」
「あーあ、そんな特典付きなら俺もぶつかりたいな」

背後の会話に、何故だか神経が集中する。
下品で節操の無い―――そういうことに興味がある年齢だから仕方ないけれど―――会話をする少年たちに不快にさせられる。

寝坊なんてするから。
前見ずに走るから。
走って登校なんてするから。
今の彼にはわからないけれど、彼女に対してふつふつと苛立ちが生まれてくる。

「―――え、入江、おい?」

彼を呼ぶ友人の声が聞こえたのは、それからしばらくした後だった。
もう会話は聞こえないけれど、彼の不機嫌は直らない。

「どうしたんだ?さっきからぼーっとして」
「別に」

何だか今日はうわのそらなんだな、と声を掛けた友人は思ったのだった。













その日の夕方。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

うふふふ、と紀子が近付いてくる。

「は?なんだよ気色悪い」
「今日琴子ちゃんとぶつかった?」
「はあ?何言ってんだ?」

ぶつかったのは自分ではない。
それをまた思い出して、少し苛立ちながら彼は言った。
いや―――何故それを苛々するのだろう。
むしろ痛い目に遭わなくて良かったというべきなのに―――。

「あらそぉ?せっかく王道アイテムを持たせたのに!」
「王道?」
「ふふっ、トーストをかじったまま走る少女がぶつかるのは恋の相手と相場が決まっているのよっ」
「何だそれ」
「んもう!2人とも鈍いんだから!琴子ちゃんにちゃんと言っておけばよかった!お兄ちゃんにぶつかりなさいって」
「そんな危険な真似させるなよ!俺はもうセンター試験みたいな目には遭いたくないからな!」

そもそも彼女と彼の行き先は同じなのだから、背後からタックルになってしまう。
それこそ危険である。
この母親の考えることは、どこに持って行きたいのか全く理解できない。
自分を交通事故にでも遭わせたいのだろうか。

「あらぁお兄ちゃんたら不機嫌ねぇ。何か面白くないことでもあったの?」
「…ない」
「本当?」
「ないったらない!」

いい加減にしてくれと、彼は母親を振り切るためにイスから立ち上がる。

「何よぅ、少しくらい乗っかってくれたっていいのに」
「俺二階で本読んでるから」
「待ちなさいよ~」

「ただいま帰りました~~」
「あっ!」

紀子は彼から玄関へ意識を向ける。
かわいくて仕方ない琴子のお帰りなのだ。
これでやっと解放されると、彼は階段を上り始める。

「おかえり、琴子ちゃん」
「おばさま、ただいま」
「今日は少し遅かったのね」
「あ、そうなんです。実は今日、朝、人にぶつかってしまって。あたし気付かなかったんですけど学生証落としちゃってたみたいで、ぶつかった人が届けに来てくれたんです」

階段を上る、彼の足が止まる。

「まぁ!琴子ちゃん!誰にぶつかったの!どうしてお兄ちゃんにぶつからなかったの?」
「え?なんで入江くん?」
「だってぇ…トーストをかじった女子高生がぶつかる相手は恋の相手だと決まってるでしょう?」
「そ、そんな力説されても…。おばさま意外とそういうのお好きなんですか…」
「これが悔しがらずにいられますか!むきーっ」
「あ、あの…すみません…」

何故そんなことをしなければならないのかよくわからないが、琴子は肩をすくめて謝った。

「それで!その男の子とはどうだったの?」
「どうって…ただ届けに来てくれただけですけど…」
「格好良かった?」
「ちゅ、中学生ですよ」
「駄目!油断大敵なんですからね!そんな運命的な出会いじゃあ、年の差なんて乗り越えちゃうわよ」
「あ、あの、おばさま、飛躍しすぎです。たぶんもう会うこともないでしょうし、考え過ぎですよ」

あはは、と恥ずかしそうに苦笑いを浮かべる。
ふと彼女が視線を上げると、いつの間にか紀子の向こうに直樹が立っていた。
階段を上がっていたはずの彼は何故かここに戻ってきていたのだった。

「あ、入江くん、ただいま」
「……」
「お兄ちゃんったら!お兄ちゃんがしっかりしてないから琴子ちゃんが他の人にぶつかったじゃないの!」
「お、おばさま、それは入江くんのせいじゃなくて…」
「運命って危険なんですからねーーっ」
「…ばっかじゃねーの」

ふん、と彼はそれだけ言って。
再び階段へ向かった。

―――苛々する。
へらへら笑っている彼女にも。
それだけを言うためにここに足を向けてしまった自分にも。




「…ぶつかったぐらいで、恋に落ちるかよ」

ぼそりと呟いた誰にも届かないその言葉の本当の意味は、彼自身ですら知らない。















きゃあ、遅刻だ、と彼女は相変わらず騒がしい。

「入江くんっ、あたし、外せない講義があるから先に行くね」
「あぁ」
「またお昼にねっ」

にこにこっと彼女が笑う。
そうやって約束できるのが、嬉しいらしい。
いい加減時間が差し迫っていると言うのに、そういうことはちゃんとそつがない。

「…転ぶなよ」
「うん!ありがとう!」

心配されるのすら、幸せそうだ。
きらきらと笑顔を浮かべて、彼女は走り出す。
いつかの下り坂。
息が白く、きらきらと染まる季節。
機能性に優れたブーツを鳴らして彼女は遠くなっていく。

ふわりと揺れたそれを見て、彼は眉を顰める。

「…なんで遅刻しそうな日に、アイツはスカートを履くんだよ…」

嫌な予感。
彼は思わず早足で彼女を追う。
視界では既に小さくなった彼女の後姿が、角にさしかかった時。

その予感はあっけなく的中する。









彼女は勢い良く走っていた。
今日の一番の講義は外せない。
だけど彼女は嬉しそうに走っていた。
彼女は今や、人妻。
大好きで大好きでたまらない、直樹の奥さんになれたのだ。
最近はご機嫌である。
堂々と学食で一緒に食べれる。
合わせれば、一緒にも帰ってもらえる。
そんな幸福なことを考えていたから―――目の前に現れたものへの反応が遅れた。

「きゃああ」
「うわあっ」

どしん、と彼女が大きく尻もちをついた。
ぶつかった人間も後ろに倒れた。
今日は一般人らしい。とりあえず学生ではなかった。

「…すみません、だ、大丈夫ですか!?」
「あ、え…えぇ」
「…?」

ぼうっとしている青年を覗きこむと、青年はあたふたとしながら立ちあがった。

「すみません、僕も不注意でした」
「怪我はないですか?」
「いえ、僕は。貴女は?」
「あたしは大丈夫です!すみません、あたし急ぎますから!」

本当に本当にごめんなさい、と言いながら彼女は走り出す。
それを茫然と立ち尽くしながら青年は見送る。

そして、ふと視線を落とすと。
―――そこには定期入れが落ちていた。

「あの女性のかな…」

自分の定期入れではないことはすぐわかったので、青年はそれを拾おうと手を伸ばして。
その地面に向けた視界に、足が映った。

違和感を感じて顔を上げる。
そこにはそんじょそこらのモデルより整った容姿の男―――直樹が立っていて。
え、と青年が思う間もなく、その定期を拾ってしまう。

「あ、それはさっきの女性のもので…」

咎めようとすると、直樹は何も言わずその定期を裏返して、青年に見せてやる。
そこに入れられているのは―――間違いなく先程の彼女と目の前の男。
しかも晴れやかなウエディングドレスとタキシード。

「…なんか、文句あります?」

だけれどその写真より数倍冷たい目をして、彼は言う。
何だか怖くなって、青年はふるふると首を振った。
少し青くなったその男を見て、彼はじっと見つめてつぶやいた。

「余計なモノ、見てませんよね」
「っはあ?えええっ?」
「…さっさと忘れたほうが身のためですよ」

ふっと鼻で笑って。
彼は彼女を追うために歩き始める。
早くこの定期を届けてあげなければ、彼女は電車に乗れないだろう。
探しに戻ってきてしまうかもしれないし―――。

彼は定期に入れられた写真を見る。
白いドレスの彼女が、彼の隣で微笑んでいる。
こんなのに写真を入れるなと言ったけれどたまには役に立つもんだなと。
そうしげしげと思いながら、それを荷物の中にしまったのだった。





あれから3年。
よくわからない感情とやっと向き合った彼と。
まっすぐに彼を追っかけていた彼女は。

ようやく夫婦になりました。






( しあわせなのは おたがいさま )











センター試験終わった後も授業ってあったっけ、日直ってあるんだっけと思いながら、またしても細かいとこ無視ってしまいました。
横着ですみません。

ぶつかった男どもはただのラッキースケベです(何ソレ
特に琴子ちゃんに懸想してませんのでご安心を。

本当は前半の青い入江くんだけで終わろうと思っていたのですが、なんだか物足りなくて後半付け足し。
あまり自分は書きませんが、過去と現在の対比のあるお話って好きです。
入江くんと琴子ちゃんの関係がどんな風に変わったかありありとわかるので。

ちなみに前半だけのときのタイトルは「王道バッチコイ」…タイトルセンス無いにもほどがある!
ギャグのつもりだったから…←言い訳

王道出会いその1…トーストをかじった女子高生が曲がり角でぶつかる!+パンチラ!
これは少女漫画であれば恋の予感、少年漫画であればハーレム話にはよくありそうですね。
(ちなみにその2は図書館で同じ本を取ろうとして手が重なっちゃうパターン…)

「ぶつかったぐらいで恋に落ちるかよ」と入江くんが言いましたが、はっきり言えば「他の男とぶつかったぐらいで(あいつの俺への気持ちが)動くかよ」という意味がありました。当時の入江くんは無自覚なので、それを文に入れるのはやめてしまいました…が、ここで書かないと伝わらない文章ですみません(笑)こういうのをうまく組み込む方法がわからない…。

自分のもやもやした感情を理解し、向き合い、そしてさまざまな問題を解決した入江くん。
彼にとっての一番の敵は、きっと彼自身だったことでしょう。
すっきりしたでしょうねー、と言う気持ちを込めて。
入江くんと結婚できて幸せいっぱいの琴子ですが、入江くんだって幸せなんだよってのをアピールしたかったんです。











関連記事
スポンサーサイト

コメント:

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

ヤキモチって食べれる~?笑

イタキスファンには大切な11月に相応しいお話だと思って楽しませて頂きました。
青い入江くんの気持ちの移り変わりがとてもよく出ているお話だなと思って読み進んでいて、あとがきを拝読したところで「やっぱり!」と、アハ体験出来ました。結局のところ、入江くんの場合は、青い時代だろうが、手中に収まった結婚後だろうが、やきもち妬きさんには変わりないって事ですよね笑。可愛いんだから~笑。
カワイイお話をありがとうございました。次作も楽しみにしています。

返信ですw

ちぇるしぃさん
>>「王道バッチコイ」タイトルつっこみありがとうございます♪笑えましたかw結構本気だった自分が怖いです(笑)やめておいて本当に良かったみたいです←
大魔神は敵に回したくないですからね〜。琴子ちゃんのあらわな姿を見たラッキースケベでしたが、目先の幸せより後々の危機を回避したほうが当人のためでしょう(笑)
いつもありがとうございます♪



REEさん
>>こんにちは!ありがとうございます♪
こちらこそいつもかわいくて素敵なお話をありがとうございます!
入江くんの気持ちの移り変わりって面白いですよねwwもっと上手に書けたらいいんですけど(笑)
自覚無いけれどヤキモチ焼く入江くんも結婚後の自覚した入江くんも、あの不器用さがたまりません←末期
これからもよろしくお願いしますww


紀子ママさん
>>ありがとうございます〜ww
「王道バッチコイ」、本当に採用しなくてよかったみたいですね(笑)思いとどまった自分を褒めてあげたほうがよさそうです←
独占欲が無自覚な入江くんは素敵です♪琴子ちゃんがいないところでそのカケラを見せる入江くんが大好きです←
琴子ちゃんのあれを見れた男どもは確かにラッキースケベですが、確かにあのツンドラに遭うならかなり不幸ですね。ご愁傷様でした…(笑)
イリコトワールドではこの2人は終始お互いを想いあってればいいと信じて疑いませんっ☆
拍手ありがとうございましたww
非公開コメント

10 | 2018/11 | 12
-
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

嘉村のと

Author:嘉村のと
素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。