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恋かもしれない35題 22 「うたごえ」

2011.07.18 13:14|お題
「恋かもしれない35題」より。

イリコトってかなり難しいと実感してます。





    *   *   *



*  *  *



ふ、ふ、ふん、とご機嫌な声。
途中歌詞が入って、時折ルルとかラララになって。


「ご機嫌だな」


ふつふつと、苛立つ。
―――何でお前はそんなに嬉しそうなんだよ。楽しそうなんだよ。
お前は、それで、いいのかよ?


誰といたんだろう。
誰と笑っていたんだろう。

お前が笑うのは、いつだって俺がなにかしてやったときで。
お前は俺が大好きだから、だから。

どうして今、そんな風に笑っているんだよ。


(良くないのは、お前だろう?)



本当は、そんな声に耳を塞いでいた。











世界は複雑だと誰かは言ったけれど、少なくとも彼にとってはそうじゃなかった。
彼にできないことはなかった。
何になろうとしてもなれたし、ほとんどのものは手に入った。

誰もがうらやむ場所にいた。
そのはずだった。

だけど、彼は欲しいものが無かった。
何もかもが手に入るからこそ、彼は知らなかった。



でも、彼の世界に、彼女が現れてから、世界は何故か歪み始める。



見知らぬボタンが目の前に現れて、彼がそれを押すと、まったく知らない景色が浮かび上がる。
何故だかわからないけれど―――むっとしたり。ほっとしたり。もやもやしたり。

それが、恋愛感情だったなんて、彼は知る由もなく。
知らないうちに、彼女のいる世界が当り前になって。その世界に苛立ちながらも、彼は知る。


その苛立たしい世界こそ、美しいことを。











「今夜は帰ってこないかと思ったよ」

―――帰ってこなくてもいいよ、お前なんて、おれは気にも留めない。
どうでもいい、関係ない、お前が何しようとしまいと。


心の中で言い訳みたいなセリフをひたすら繰り返していた。
















    +   +   +








「ふふん、ふ~ん、ららら、ら~」

「何その意味不明な歌」

「うきゃああっ、な、なに、入江くん、いたの?」

「ああ。琴子、コーヒー」

「う、うん」

彼女はあたふたとコーヒーの準備をする。
それを彼に差し出し、自分もイスに座った。
珍しい2人だけの朝食。
コーヒーに口を付ける彼を見つめて、彼女はにへにへと笑った。

「なに?」

「えっ?あ、いやあ、しあわせだなあと思って…それだけ」

照れたように彼女は首を傾げて見せる。

「ご機嫌だな」

「うん!だって入江くんがいるんだもん!」

それに2人きりだし、と付け加えながら、勢い良く肯定する。
彼はかすかに目を細めた。

「そりゃ思わず歌だって歌っちゃうよ~っ、あたしかなりご機嫌だもん♪」

えへへ、と彼女は笑う。

「お前、機嫌良いと歌うの?」

「え?」

彼女は彼に顔を向けて、その大きな眼をぱちぱちと瞬かせる。
彼はコーヒーを置いて彼女のほうを見て―――ほんの一瞬。


彼女の唇に、ブラックコーヒーの風味がほんのりと残る。


「…い、入江くん?」

「ご機嫌ならもっと歌えば?」

「………う、え、あ?う?」

真っ赤な顔であたふたとあたりを見回している彼女を見ながら、彼は意地悪くにやにやと笑った。
彼女は結局顔を伏せて、自分の手のあたりを見た。

まさか、ずいぶん前に歌っていた彼女に嫉妬しただなんて、彼は言わない。

彼女だって覚えているはずもないこと。

ご機嫌な彼女。自分以外の人間に、ご機嫌にされる彼女。


――彼女をこんなに嬉しそうにできるのも、笑顔にできるのも、自分だけ。
譲らない、譲りたくない。

当時はわからなかった、知らなかった感情。

他の誰かに、絶対触れさせたくない、大切なもの。
自分に彼女が必要なように、彼女には彼だけいればいいのだ。
そんな世界でこれからも生きて行きたいのだ。

「…歌わないの?」

くすくす笑いながら彼が尋ねると、彼女は赤い頬で彼を睨む。
潤んだ瞳で、上目づかいで見つめられる。

「―――…もう一回くらい、してくれたら考えようかな…」

ゼータクモノ、と彼は小さく呟きながら、もう一度身を乗り出した。









( どんな日常でも君がいれば ごきげんなの )






 *  *  * 


結局、歌うんじゃなくて朝っぱらから啼くことになりそう(笑)
比較的平和なお話です。









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嘉村のと

Author:嘉村のと
素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

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