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恋かもしれない35題 05「それでも」(27の続き)

2011.11.01 21:35|お題
27「甘いことば」のつづきで書いてみたのですが、あまりつながっていないような気がします…。
またしても会話ばかり。

それでも、良かったらどうぞ(笑)


*  *  *




「や、ぅ、待…」

カーテンの隙間から差し込む日差し。
まだまだ日は高いのに、締め切られた部屋はおのずと薄暗い。

うっすらと目を開けて、彼女は彼を見る。
その頬はピンク色に染まり、今は、肌もその色に染まっている。
するすると手を滑らせていけば、また甘い声がこぼれた。

「待たない」

その白い脚に手を伸ばせば、ひゃ、と彼女が身体を震わせる。

「…ん、や、恥ずか…し」
「琴子」

名前を呼べば、彼女の抵抗が弱まる。
つくづくこの女は、彼に弱い。

「どうぞって言ったの、お前だろ」

彼女の頬がまた染まる、
うぅ、と少し視線を迷わせ、ためらうしぐさを見せる。
そんな時間すら惜しくて――彼は彼女の唇を乱暴に塞いだ。

こんな風に。
彼女を求めたくなるなんて、昔は思いもしなかった。
彼女じゃなければ駄目だと思い知る日がくるなんて、想像すらしていなかった。

唇が離れて。
彼が彼女を見ると、彼女も熱のこもった瞳で見上げてくる。
そして、微かに頷く。

「…はい、旦那様」

ちょっと恥ずかしそうに。
ちょっといたずらじみた顔で。
そして、ちょっと嬉しそうに。

こうやってすぐ、彼女は彼に爆弾を落としたりする。





















「お前、そう言えばあのとき、アイツに自分のアパートに来ないかって言われていたらしいな」
「えっ?あ、…あぁ…」
「…行こうと思った?」

彼女はぱちぱちと目をさせて、それからぶんぶん頭を振る。

「い、行くわけないじゃない!」

その頬を赤く染めて、必死で否定する。

「なっなんで入江くんがそんなこと知ってるの?」
「…余計な報告してくる奴がどこにでもいるんだよ」
「も、もう!いくらあたしだってそう言われてホイホイついていったりしないよ!」
「――どうだかな」

くしゃりと髪を撫でる。

「いつか似たようなことがあってついていったのはどこの誰だか」
「えっ?そんなことあったっけ?」
「……まあお前すぐ忘れそうだもんな」

いつかの家出の話をしているのだが、彼女は?マークを飛ばしている。
あれは、どこぞのビデオの制作だったろうが―――。
彼女はまさか直樹が知っているとは思わない。
彼の言う通り、もう彼女は忘れているのかもしれないが。

「さ、さすがに当時の啓太の気持ちわかってて、ついてったりしないよ!あ、あたし…い、一応、人妻だもの…」
「あのとき、俺が現れなくても?」
「……」

彼女は言葉を止める。
確かにあのときは、苦しくて悲しくて、誰かにすがりたい気持ちもあったかもしれない。
大切だとか、好きだとか、優しくしてくれたら、ほろりともたれかかりたくなったかもしれない。

「それでも、行かないよ」

だとしても、自信を持って言えた。

彼女は彼が好きで。
彼が彼女を好きでなくても、自分は好きでい続けれる自信がある。

「あたし、あたし!…いくら、…冷たくされても、入江くんのこと、好きだから…」

胸がきゅうっと苦しくなる。
その言葉をたがえるつもりは無い。
だけれど、あのとき。
彼のその仕打ちに耐えられず、感情を爆発させてしまった自分もいる。
だけど―――彼が好きなのは、変わらなかった、はず。

それだけは、彼女の誇り。

信じて欲しいと彼女は身を乗り出せば、その頬に彼のキスが落ちてきた。
その途端苦しい気持ちは霧散し、彼女の視界に映るのは彼の優しい笑み。

「知ってる」
「……、うん!」

にっこりと彼女は笑う。

「わかってたよ、お前が絶対ついていかないって」
「えへへ!信用されてるんだね、あたし」
「…あぁ、『わかってたんだ』」

彼女の想いは誰より強く。
それが簡単に崩れるはずがないことくらい、彼は知っていた。

―――それでも。

「…ん、…?入江くん?」

その唇を塞いで、その身体に覆いかぶさる。
少しだけ離れていただけなのに、ひどく暖かく感じる。

彼女じゃなきゃ駄目なんだと、そう言ってあげればきっと喜ぶのだろう。

「…っ、あ、ぅ…」

熱い息が、はぁ、とこぼれた。
快楽か、それとも痛みか―――たぶん両方―――に眉を顰めて、彼女はぎゅっとシーツを握り締める。

「…りえ、く…」

途切れがちに聞こえる、彼女の声。
それを聞くと、彼はひどく満足した気持ちにさせられる。

何故だろう。
彼女の想いはいつも強すぎるほど強くて、不安になどなったことはないはずなのに。
がむしゃらに求めれば、必死にそれに応える姿に、とても安堵する。

「ん、ね…待って」

細められた彼女の目が、彼を捉えている。

「入江くんは、…どう、思った?」
「――何を」
「…そ、その、話を聞いて…。ちょっとは、怒ってくれたりしたのかなって」

ためらいがちに聞いてくる彼女。
彼はそんな彼女に閉口する。
―――何が『ちょっとは怒ってくれたりした』だ。

ドラマを見て、似たようなシチュエーションを見て。
それで動揺した彼女を見ただけでも――許せない気持ちになるというのに。

嫉妬していた、と。
あの場で堂々と宣言してみせたというのに。

どうして何度も確かめたがるのだろう。

「…お前の期待するような答えは言ってやれないけど」
「えっ、そ、そうなの?」
「……それでも、聞きたい?」

少し意地悪そうに尋ねてやる。
彼女はうぅ、と少し悩んだけれど、彼女が出す応えは決まっている。

「それでも!聞きたいっ」

気になったら、聞かずにはいられない。
彼女はそういうに決まっている。

「そう」

彼はふっと笑って、彼女をくるりと一回転させる。
彼に背中を向けることになった彼女は、え?と彼を振り返って見上げる。

「入江くん?」

その背中に指を滑られると、ひゃあ、と彼女が身体を震わせる。
それに気を良くしたのか、うなじに舌が這わされて。
彼女は甘い声をこぼした。

「や、ぅ、…りえく、」
「―――お前が絶対行かないってわかってた」

低い声。
彼女の身体の熱があがっていく。
返事はできず―――それは嬌声か、それとも吐息か。

「お前が俺以外を好きになるはずがないってわかってたよ」

くらくらとする頭で、彼女は彼の言葉を全身で聞く。
彼のほうを見ようとしたけれど、襲ってくる快楽に耐えられず、シーツに顔をうずめる。

「それでも」

彼女は瞳を閉じる。
ちゃんと聞いていたいのに、自分がどこかへ行ってしまいそうで、シーツをぎゅっと握りしめる。
彼の声が、ほんの小さく―――彼女の耳に届く。

「それでも、怖かったよ」

彼女がずっと自分のそばにいて、繰り返した『好き』と言う言葉。
転んでもへこたれても、それでも立ち向かってきた彼女。
そんな彼女が、簡単に、そうやすやすと―――他の男のもとに行くはずがない。
理屈ではわかっていた。

それでも。
その手を取ってしまうんじゃないかと、怖かった。
自分以外の手が、彼女に触れてしまうんじゃないかと恐れた。

「入江、くん…?」

彼女を失うんじゃないかと、思った。
理屈ではわかっていても、感情は揺らいでいた。

今、このぬくもりが腕の中にあって。
―――彼女を失わずに済んだこと。
それがあのとき食堂へ駆けつけた自分のおかげだと言うのなら。
彼はそれをどういって表現したらいいのかわからないくらい―――感謝している。

「……なんだよ?」

彼女は彼を振り返って、仰ぎ見る。
はぅ、と熱のこもった吐息と共に彼女は笑顔をこぼす。

泣き出してしまいそうなくらい。
すごくすごく幸せそうな気持が、彼女の心のなかいっぱいに広がる。

「…それって、あたしのこと、大事だって、ことだよね?」
「もう、黙れ」
「やだ、黙らない…っん、ちょ、…」

だって聞きたいんだもん、と彼女がばたばた抵抗するけれど。
彼はそんな彼女をねじ伏せて、続きに戻ることにする。
しばらくすると―――揺れるスプリングの音と彼女の甘い声だけが部屋に響き始め。
彼女には何も聞こえなくなった。


それでも。

彼女が意識を失う直前に。
まるでひとりごとのように、彼は小さく呟いたのだった。



( そんな当り前のこと、聞くな )












地味に「甘いことば」の続きとして書きましたが、全然リンクしていないような気もします(笑)
しかし私の分はどうしてこう展開が急なんだろう(T T)
会話ばっかりで反省です。

啓太編はやはり萌え要素が本当に高くて。いよっ!啓太、えらい!あんたえらいよ!←そっち?
あのとき入江くんが駆けつけてこなくても、琴子は啓太については行かないと思ってます。
仮についていっても、ちゃんと玄関前で帰ると思う。まぁ、酔わせたらお持ち帰り簡単にできそうな琴子ですけど。
他の男にまったくブレない琴子はやっぱり素敵です。そういう面で、入江くんは琴子のこと信用していると思います。

でも信じていると、安心は違うと思いまして。
「それでも」と言うお題と言うことで、入江くんに「それでも怖かった」と言わせてみました。
それだけです(笑)










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chan-BBさんへ

こちらにもコメントありがとうございますっ!!
どどど、ドキュンって!!あぁぁもう!そんなことを言っていただけるなんて、書いてよかったーーwwって嬉しくって小躍りしちゃいます♪
入江くんって表面にまったく出さないけど、本当は怖かったに違いない!と思いますwあのころを思い出してきっと今の幸せを噛みしめていてくれると信じています!
「愛を奏でる」、ありがとうございます(^ ^)いろいろなことがあって、2人でそれらを乗り越えてきたからこそこの二人は幸せになれたのだと思います♪
本当にありがとうございましたww

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