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恋かもしれない35題 35 「笑って」

2011.11.01 21:30|お題
やっと自分の生活が落ち着いてきたので、今たまっている作品をばばっと更新します。
書いてはいましたwただネットにつなげない生活を送っていただけですw

しっかし、なんでしょうね…これ。
相変わらずまったく動きのない作品(笑)

 *  *  *




ぎゅ。
ぎゅう。

ぎゅう~~~。


「うっとおしい!」
「はわっ」

思い切り、腕を振り払われてしまった。
仮にも妻に向かってその仕打ちは無いだろうと、彼女は頬を膨らます。
睨んでみたけれど彼は彼女すら視界にいれてくれない。

「…ちょっと!入江くん!」
「なんだよ、うっせーな」
「………」

彼女は考えてみる。

仮に。
彼が彼女を抱きしめてきたら―――彼女は大歓迎である。
とっても嬉しいし、幸せである。
なのに、どうしてだろう。
どうして彼は、妻である自分の手を振り払うのだろうか。

―――やっぱりあたしの想いが、入江くんの想いよりずっとずっと強いからか。

わかりきってることなのに、彼女は改めて胸を痛める。
愛されていないわけじゃない、それはきちんとわかってはいるのだけれど。

彼の背中を見つめる。
邪魔するな、と言いたげなソレ。
何かに集中しているときも、そうじゃないときも、邪魔すると怒る。
彼女は思う。
もし自分なら全部投げ出してもいいのに。
彼以上大切なものなど無いのに。

すす、と近づけて、もう一度彼の背中に抱きついた。
暖かいぬくもり。

「――やめろって言ってんだろ!」

すると、彼女はすとん、と手を下ろして。
ふいっと向こう側を向く。

「……わかったよ!」

それだけ言って、彼女はその部屋から出て行く。
つまんない、と口の中で呟く。

構ってほしい、わがままな自分。
何度も繰り返してきたやり取り。
慣れてるし、平気だし、ちゃんと愛されてる自覚もあるし。

それなのに、何だか悲しくなって。
彼女は大きなため息をついてから居間に降りて行った。












「まだ拗ねてるのか」

一緒のベッドに横になって。
いつもべたべた嬉しそうに彼にひっついてくる彼女が、つーんとそっぽを向いていて。
彼は少し面倒くさそうに彼女に尋ねた。

「拗ねてないもん」
「拗ねてるだろ、間違いなく」

むぅ、と彼女は思う。
どうしてこう自分はわかりやすいのだろうか。
ちらりと彼を窺えば、彼は眉を顰めて彼女を見ている。
それだけで態度が軟化しそうだったけれど、彼女はそれを堪える。

「……ったく、ほら」

ぽんぽん、と彼が枕を叩いた。
いつもの彼の腕枕の場所。
そこに来てもいいというお許しでもあり―――こっち向けよという合図でもある。

彼女はちらりと見て、果てしなく迷う。

ここで彼女が折れなくて、それでも彼はこうやって機会を作ってくれるだろうか。
今折れないとこの小さな諍いが、引き下がれなくなってしまわないか。
やだ、と言ったら、あっそ、と言われてしまうかもしれない。

あぁ、駄目。
彼女は苦しくなって、彼のほうを向く。
こうできなくなるほうがずっと辛い。
ならプライドとか不安とか、気にしたくない。

彼の腕枕に、頭を預けたのに。
さっきよりずっとずっと胸が苦しくなった。

彼が少し目を細めて微笑んで、それから目を閉じる。
それをじっと彼女は見つめて―――唇を噛んだ。
自分も眠らなくちゃと思って目を閉じると、ぽろっと涙がこぼれた。



悲しくて苦しくて、切なくて怖くて。




「―――何、泣いてんだよ」

閉じた瞳を開ければ、不機嫌そうに彼が彼女を見ていた。
彼女は首を振って、わかんない、と嗚咽交じりで答える。

つい、と彼の指が彼女の涙をぬぐう。
彼女が彼の顔を見上げれば、彼は優しい目で彼女を見ている。

「どうしたら、俺の奥さんは機嫌を直してくれる?」

優しい声でそう尋ねられて、彼女は思わず頬を染めた。
くしゃりと頭を撫でられる。
彼女は恥ずかしくて、肩をすくめた。
彼をずっと見ていられなくて、視線を逸らす。

「機嫌、悪くないもん…」
「ふぅん?」

彼は笑っている。
彼女の顔を覗きこもうとしたので、彼女は慌ててそっぽを向く。

「じゃあ、…どうしたらこっち向いてくれる?」
「む、向いてるよ」
「……じゃあ、…どうしたら、俺を見てくれる?」

とろけるような声でそう言われて、彼女はドキドキしてしまう。
ますます顔を上げられなくなっていると、彼の指が彼女の顎に触れた。
くい、と上に顔を向けられて、彼と視線が合う。

どうしよう、と彼女は思う。
彼は彼女の頬を撫でて、涙でぬれた瞳を今度は唇でぬぐった。

「…どうしたら、泣きやむ?」
「な、泣いてないよ…もう、止まった…驚いて…止まっちゃった…」

彼女は思わず正直に言ってしまった。
それを聞いた彼は少し得意げに、へえ?と笑った。
彼女は結局負けたような気持ちになって、また視線を逸らした。
これ以上見ていられなかった。

「琴子」
「あっあたしの負けですぅ…だ、だからこれ以上ドキドキさせな―――んっ」

逸らした顔を両手で包みこまれて。
彼女の唇が彼のそれと重なる。

「琴子」

離れて、そうやって呼ばれて、彼女はぽーっと彼を見つめて。

「どうしたら、笑ってくれる?」
「え…?」
「笑って、琴子」

彼女は、思考の止まっている頭で、彼のセリフをぼんやりと聞いている。
それから笑おうとしたけれど―――笑えない。
ドキドキしてくらくらして、顔が熱くて、笑えない。
がちがちになっていたのだった。

「琴子」
「む、無理…入江くん、そんな顔で見つめないでよ!あ、あたし、わ、笑えない…」

入江くんはどうしちゃったんだ、と彼女はあたふたと彼から離れようとした。
もしかしたら自分は夢を見ているのかもしれない。
自分に都合のよい夢を。
なんてすごい夢。
それだからこそ―――彼女は怖気づいてしまう。

「どうして」
「だって、だって、甘さ120%って感じだもん!い、入江くん、夢だからってサービスしすぎ!あたしの心臓がもたなくなっちゃうっ」
「夢?」
「こ、これなら明日の朝は元気いっぱいになってると思うから!あ、あたしは現実に戻るっ」

ふとんの中にがばっともぐりこんだ。
彼がくすくす笑っている声が聞こえた。
彼女はひたすらひつじを数えてみる(現実に戻るつもりのはずなのに)
それなのに、彼の声が聞こえた。

「琴子、笑って」
「わ、笑えないってば!だ、だって、ドキドキしちゃって、よ、よくわかんないんだもん!」

そう言った途端、掛け布団がはぎとられる。
え、と彼女が思ったときには、彼の顔が彼女を覗きこんでいた。

「じゃあ、もう一回キスしようか」
「へっ?」
「何回したら、…奥さんは笑ってくれるかな」

意地悪そうに、彼はにやにや笑っていた。
その言葉にはまるで魔法が込められているかのように、彼女の頬はさらにさらに赤く染まっている。
見上げた彼女の目は―――本人が言ってた通り、涙はすっかり乾いていた。

滲んでいない視界のなか、彼の顔がゆっくりと近付いてくる。
―――甘さ120%の彼が夢ではないことを、彼女は身体で教えてもらうのでした。




( 悪かった の かわりに )











たとえ彼女が笑えても途中では終わらなかったでしょう(断言)
入江くんって琴子に関しては結局「言いすぎた」とか多いイメージがあります。
理性的ではいられない、というような。

でも、やっぱりあまり甘くないような気がします(; ;)
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コメント:

寝る前に・・・

眠たくなる前にクリック!!して良かったです。
もう、胸キュンしまくりでした。
「どうしたら、俺の奥さんは機嫌を直してくれる?」
「じゃあ、…どうしたらこっち向いてくれる?」
「……じゃあ、…どうしたら、俺を見てくれる?」・・・・
直樹の『どうしたら?シリーズ』(命名・杏子-anko- 勝手につけるな!)に撃沈されました。

杏子ーankoーさんへ

うわわぁ〜(*^^*)撃沈ですかっ?と言うことは少しは入江くんを素敵に書けていたということでしょうか←誇大解釈(笑)
嬉しいですwビクビクしながら更新したものなので、そう言っていただけて感激です〜っo(^-^)o
入江くんが本気出して琴子を口説こうとすればあれっくらいできるはずだと信じたい今日このごろ…☆
コメントありがとうございました(^w^)

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嘉村のと

Author:嘉村のと
素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

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