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うそつきあくま(前)

2011.10.17 10:35|短編
少し前に「甘いことば」の後書を書いた際、「そう言えばノンちゃんって琴子に抱きついたっけ」と思い出し、その影響からノンちゃんのお話を書きたくなりました。

なので、ノンちゃんのお話です。
重要ないのは承知していますが…書きたくなったから仕方ない←
イリコト前提(むしろ根底)なのですが、入江くんが最後のほうにちょーっぴっとしか出て来ないですし、琴子ちゃんすら後半にならないと出てきません。

ノンちゃんの話なので、比較的暗くて重くて、はじめは特に「あー鬱になりそう」みたいなお話です。

そういったお話が嫌な方は避けた方がよいかもしれません。
それと、ノンちゃんは琴子に特別な感情を抱いていないと思う!と言う方も避けたほうがいいかもしれません。

ただ結末は暗くありませんので、それだけは信じてくださると嬉しいです。


では、OKだよ、という方だけ、どうぞ。




*  *  *




ずっと吐き続けている嘘があった。
それはまるで呪文のように、何度も何度も繰り返した。

『大丈夫』

笑う自分。
それを見て―――目の前のひとは安堵してくれる。

暖かい場所のはずなのに、何故かとても寂しい。
気付けば自分はひとりぼっちで、窓の外のお日様を遠く見つめていた。

誰かの声が聞こえたような気がして。
それがどんどん遠く消えていっちゃうような気がして。




追いかけたいと思って、そして目を覚ます。




目覚めた場所が見慣れた景色で、次にそれが『見慣れている』ことにうんざりとして―――起き上がる。
身体は重くて重くて、上がっている熱。

こんな生活が終わってくれるのは―――それは、死ぬときなのだろうか。
そんなことを重い頭でぼんやりと考えてみる。
自分の身体を取り換えられるはずもない。
一生付き合って行かなくちゃならない。

「また、か」

やだなあ。
しばらく入院なんだろうな。
慣れたとはいえ、好きじゃない。
また授業には遅れるし、皆は自分のことなんか忘れてしまう。

「おはよう、起きた?ノブヒロくん」
「…おはようございます」

看護婦さんが部屋に入ってきて、それはもう優しく笑っていて。
一緒に両親も入ってくる。
心配そうな顔をしているけれど――若干もう慣れたもの。
めんどくさそうな空気すら出ている。

「具合はどう?」
「―――大丈夫です」

そのセリフを繰り返す。
大丈夫なんだと自分に言い聞かす。


小さいころから、良い子でいようと思っていた。
そうしなきゃいけないと思っていた。

そうしなきゃいけない。
だって自分は、色んな人に迷惑ばかりかけているから。

入院費だってかかってて。
学校の授業だってまともに受けれなくて。
約束していたゲームも貸してあげられなくて。
いろいろ世話もしてもらって。
こんなに治療してもらっているのに身体は全然治らなくて。

親にだって学校の先生にだって友達にだってお医者さんにだって看護婦さんにだって迷惑ばかりかけている。

「採血しますね」

大丈夫。
大丈夫。

嫌いな注射。
おいしくないごはん。
苦いお薬。
誰かの怒鳴り声。
無くなっていく自分の場所。


大丈夫。


そう繰り返すことしか、できないから。













親の喧嘩の声が、耳を塞いでも入ってくる。
聞きたくないと耳を塞いで、目を堅く瞑って過ごす。

それでも止めてとは言えない。
だって彼らの喧嘩の理由が自分のせいなのだから。

学校には行きたいのに行ったって、どうせ誰も自分のことなんて覚えていない。
誰も座っていない席が、教室の隅にあるだけ。
それが自分の席だなんて誰も知らない。
学校生活を送れるはずもない。
だってどうせまた倒れて――入院する日がくるだけなのだから。

『モデルやってみない?』

貰った名刺をぼんやり見つめて、ポケットの中にねじ込んだ。
こんなぼろぼろの身体で何ができるんだろう。
どうせまた中途半端で終わってしまう。

ため息をついて、彼は自宅の玄関をくぐる。
何気なくポストを覗いて―――珍しく手紙が入っていた。

「…入江、裕樹」

手紙。
少し表情が和らぐ。
その名前を聞くと、彼の記憶がよみがえる。

つまらない入院生活の中で―――いつまでも鮮やかで、賑やかだったあの2週間を思い出す。
静かな病室はいつもより騒がしく。
笑いが絶えなかったあの日。

かさ、と手紙を丁寧に広げる。
何度が目にしたことのある友人の字。
それを読み始めたけれど、その文字が飛び込んできて、思わず思考が止まってしまう。

「………」

何度か貰った手紙の中で、必ず出てきた名前。
話を聞くだけでも思わず笑わせられる、賑やかなヒト。
何故か声が詰まる。

「…そっか、そうだよね。琴子さん、直樹さんのこと好きだったもんね」

当時はそういった恋愛感情などわからない子供だった。
だけれど喧嘩ばかりするけど仲が良いなぁとは思っていた。
冷たくあしらわれていたような気もしたけれども。

「良かったじゃん」

そう言いながらも。
手はくしゃりと手紙を握りつぶしていた。

彼女のことを『好き』だと思ったことは無い。
だけれど。

―――みんなみんな、自分のことを置いていってしまう、と思った。

何度も嘘を吐いた。
大丈夫だって自分に言い聞かせてきた。

それなのに。
どうして自分ばかり置いていかれてしまうのだろう。

こんなに頑張っているのに。
こんなに苦しい想いをしているのに。


乱暴にドアを開けて、言い争いをしている両親の部屋へ飛び込んだ。
自分の存在に気付いて会話を止める2人。

――今更じゃないか。

そう思いながら、言う。

「すれば?離婚」

もうこりごりだ。
もう、止めた。

良い子でいるのも。
頑張るのも。
夢を見るのも。

どうせ駄目なのなら。
駄目ななりに、自由に生きて行けばいい。
自分の居場所が無くなるのなら、はじめからいらない。

どうせ、いつか、死んでしまうんだ。




















頬をほんのり染めて、その女は首を傾げた。
計算尽くされた仕種。

きっとかわいらしいと形容するのが正しい。
だけど吐き気がする。

「いいよ、私前からノブヒロくんのこと好きだったの」

嘘だろ。
そう思いながら、ふっと笑みがこぼれる。
ヒトを見下すのってこんなに面白かったんだ。

うかれて、調子に乗っている女。
ざまあみろ。

お前もいつか捨てられるよ。
お前が―――そんな風に誰かを簡単に捨てた様に。







すぅすぅ眠っている女の顔を見て。


何故だろうか。
無性にあの入院生活を思い出す。

2週間の、忘れられない、あの鮮やかな思い出。

にっこりと笑った、あのヒト。
太陽みたいなあのヒト。
どうしてかはわからないけれど。

肉親でも無いのに。
友達でもないのに。
彼女でも無いのに。


どうして自分の心のどこかに、彼女の場所があるのだろう。

目を閉じても、消えてくれない。
さらに一層に濃くなった。

ねぇ、貴女はなんて言うんだろう。

バカにする?
同情する?
がっかりする?

わがままを言っても。いくら傍若無人な振る舞いをしても何故か許される、今の立場。
あぁ、今までどうして良い子を振舞っていたんだろう。

良い子を振舞ったって。
どうせ誰も、見てくれない。立ち止まってくれない。愛してくれない。
すぐ忘れて。
世界だけは進み続けて。
止まらない。

一生懸命だった、過去の自分を嘲笑った。


「…疲れちゃったんだよ」

良い子でいるのに、疲れてしまった。
嘘を吐き続けるのに、疲れてしまった。

―――こんなに、悪い子になってごめんなさい。

「会いたい」

会いたい。

同情でも無く。
憧れでも無く。
自分と自分として見てくれるであろう、あのヒトに。

どんなに失敗しても、どんなに笑われても。
嬉しそうに楽しそうに、笑顔でいたあのヒトに会いたい。


その時はわからなかったけれど。



きっとあのヒトなら。
自分の世界を変えてくれるだろうと――心のどこかでわかっていたのかもしれない。










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Author:嘉村のと
素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

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