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恋かもしれない35題 27 「甘いことば」Nside

2011.10.09 17:00|お題
前回の「甘いことば」の入江くんバージョンです。
嫉妬する入江くんは難しくて、なんだかまったくうまくいかない…。
だからコソコソ予約投稿です。

それでもよろしければどーぞ^^;

 *  *  *




彼にとって、今日は久々の休みだった。
朝目覚めればすやすやと隣で眠る琴子がいる。

もう日が高くなっているが、彼は彼女を起こさずにベッドから出る。

「…ん、ん…」

むにゃむにゃと幸せそうな顔で眠る彼女を一瞥し。
彼はふっと笑って下へ降りて行った。








「あらお兄ちゃん、出かけるの?」
「ああ」

欲しい本があって、彼は書店へ行こうと思っていた。
朝食の後支度をしていると、ばたばたと大きな音を立てて琴子が降りてきた。

「い、入江くん!」
「ああ、おはよう」
「おっ、おはよう!どうして起こしてくれなかったの…って入江くん!出かけるの?」
「ああ」
「あっあたしも行く!」
「来なくていい」

琴子の支度が終わるのを待っていたら、昼になってしまう。
ええ〜と悲しそうな顔を浮かべる琴子。
今日は久々に一緒の休みの日なのに、としょんぼりと肩を落とす。

「んま!お兄ちゃんたらひどいわね!誰のせいで寝過ごしちゃったっていうのよねえ、琴子ちゃん」

紀子は2人の邪魔をしないようにわざわざ友人と昼食の約束をしていた。
目を三日月形にしてむふふと笑いながら琴子の腕をつつく。
琴子はぼふっと顔を赤くして、「お、お義母さん、…」と彼から目を逸らした。
付き合ってられないと直樹は玄関を開ける。

「行ってくる」
「あっ、…」
「――そんなに時間かからないから」

それを聞いて、琴子はぱあっと表情を明るくした。
待ってるねと大きな声が閉じた玄関のドアの向こうから聞こえたのだった。












「裕樹」
「あ、お兄ちゃん、おかえり」
「お前今期末試験中だっけ?」
「うん。出かけてくる。琴子が家で留守番してるよ」
「ああ、知ってる」

自宅の前で、彼は裕樹に出会った。
まだ裕樹は制服姿で勉強道具を持ったままだ。

「…なんかドラマ見てきゃあきゃあ言ってたよ。ほんと騒がしいんだから」
「いつものことだろ」
「まあ…いいけど…じゃあ行ってくるね」

何か言いたそうにしながらも、時間があるのだろう―――裕樹は軽く手を振って歩き始めた。

「…あぁ」

それを見送って、直樹は玄関を開ける。

「ただいま」
「―――ひゃあ!」

琴子の声は彼に向けられたものではなかった。
彼は居間を覗くと、琴子が必死にテレビの画面にくらいついている。
彼女はこうやって感情移入しやすいし、ころころと反応を変える。

「そ、そうよ!押せ押せ!」

どうやら応援しているらしい。
テレビの画面の中では男女が真剣な顔で言い争っている。
ばかじゃねーの、と思いながら彼は彼女の後ろに歩み寄り声をかけようとした―――そのとき。

「ぶーーーっ、けほっ、けほーっ」

琴子が盛大にむせる。
彼女は何故か大慌てでテレビのリモコンを取り、切る。
彼の存在にはまったく気付いている様子は無い。

「…っ、はあ、びっくりしたあ…」

まだ少しむせながら、彼女は近くにあったふきんでこぼしたコーヒーをふいた。
顔はほんのり染まっていて、何度も深呼吸をしている。
何をそんなに動揺しているのだろうかと彼は思った。

「何を今更、だよねえ。過去過去」

――過去?

「あー誰もいなくて助かった」

彼女は安堵の息をついた。
彼は言わずと知れた天才で、彼女のセリフから先程までのドラマの展開をざっと頭の中で再生してみる。

『…あんな奴、やめちまえよ』


「―――…ふぅん?」

彼はだいたいの見当をつけた。
合っているかどうかはわからないけれど、琴子がコーヒーにむせたことや、慌ててテレビを切ったこと。
それらの行動が、そのドラマの展開で彼女が何かを意識したということをわかりやすく証明している。

彼のその声が彼女の耳にも届き、彼女はばっと振り返った。

「っ、おおお、お帰り!入江くん!」
「ただいま」

表情一つ変えずに、直樹は彼女を見つめた。
おそらく彼女は家族の中で彼に一番見つかりたくなかっただろうと思う。
あたふたと怯えたような表情を浮かべた。
心待ちにしていた旦那様のお帰りだと言うのに、後ろめたそうだ。

「い、いつ帰って来たの?」
「今さっき」
「そ…そう、言ってくれればよかったのに」

琴子は立ちあがって、コーヒーカップを持ってキッチンに向かおうとする。

「い、入江くんもコーヒー飲む?」

彼はまだそれに答えず、彼女に近付く。
彼女をキッチンへ逃がしはしない。

「琴子」
「な、なに?」

びくびくと彼女は彼を見る。
ふつふつと彼の心の中に何かが生まれる。

「どうして途中で切ったんだ?俺の声にも気付かないくらい集中してたくせに」
「え、えへへ…そ、その…そろそろ二階に行こうかなって…思って…」
「へえ?」

隠そうとする彼女に苛々する。
にやりと笑いかければ、眉を困ったように下げて琴子は後ずさりする。

「俺も上に行くから、コーヒーはいらない」
「そ…そう…」

彼女の背中が、壁に当たる。
追い詰められてしまった彼女はコーヒーカップを両手でぎゅっと握った。
吐息がかかりそうな位置で、彼は意地悪く笑う。

「琴子」
「はっはい…?」

別に彼女を疑っているわけではない。
ただ―――苛々する。それだけ。
彼女が隠そうとすればするほど。
動揺すればするほど。

彼は彼女からコーヒーカップを奪い取り、近くの机に置いた。
そして、彼女の耳元に口を寄せて彼は尋ねる。

「なあ、琴子」
「は…はい…」
「どうして?」
「ど、どうしてって、別に、その―――はわっ」

はむ、と彼女の耳を甘噛みする。
びくりと彼女の身体が反応して、震えた。

彼女からコーヒーカップを奪ったのは、こうされれば彼女は必ず落とすだろうから。
壁際に追い詰められた彼女の顔は赤く染まり、彼を不安そうにちらりと見る。
警告の意味も込めて、もう一度彼女に尋ねる。

「どうして?」
「い、入江くん…い、いつ頃からいたの?」

逆に問い返してきた。
彼は彼女の問いに取りあう気も無く切り捨てる。

「…ん。聞いてるのは俺なんだけど」

ふっと笑ってみせると、琴子は青くなったり赤くなったりする。

「い、入江くん!べ、別に本当に何でもないんだよっ―――ひゃっ」
「へえ?」

本当は正直に話さなくても、彼女をいじめたいだけなのかもしれない。
この乱暴な感情をぶつけたくて仕方がない。
いつも従順な彼女が否定するから、彼は彼女の柔らかな胸を強く揉んでみせる。
驚いた彼女がまた変な声を上げた。

頬を染めた彼女は彼を見上げて、必死な声でさけぶ。

「…もう過去の話だし!あたしは入江くんが一番だもん!」

―――あぁ、やっぱりな。

彼はふっと表情を緩める。
黙っていようとしたって彼女は全身から答えを出している。
行動も言葉もぼろぼろと考えていたことがこぼれてしまう。
そういうところも嫌いじゃないけれど。

「お前って本当にバカだな」
「えっ」

それが『過去にあったこと』だと自分で白状したことにようやく彼女は気付く。
彼はひょいっと彼女を持ちあげる。
行く場所はひとつ。
それを理解した彼女はみるみるまたしても頬を染めた。

「えっあ、え…」
「そう言えば聞くの止めてたんだよな。どんなやり取りがあったのかとか、聞きたくもなかったし」
「な、なな、あの、入江くん…」
「まあ、『過去』のことだし?もう聞いてもいいかもな?」

意地悪く彼は言った。

あのまっすぐな男に、彼女が何を言われたとか。
彼は本当は知りたくも聞きたくもない。
だけれどああやってわかりやすく反応する彼女を見せられると。
どうやっても上書きをしたくなる。
『過去』なら、顔色ひとつ変えないように―――。
いつまでも初心で純情な琴子にはそれが無理だとわかっていても。

ベッドに下ろして、彼女が体制を立て直す前にその手首を掴む。
大きくスプリングが揺れた。

彼女は彼のことが大好きで。
彼女は彼の奥さんで。
それは彼だって、すでにはっきりわかっているのだけれど。

それをもっともっと、はっきりと証明したくて仕方ない。
刻みつけたい。

―――エゴなんだろうと思う。
もうあの男とはもちろん何でもないことはわかっているし。
過去のことに苛々しても、あれは身から出た錆だというのも自覚していた。
今更どうしようもないし問い詰めることでも無い。

でも今は無性に―――抱きたくて仕方ない。

彼女が、少しでも自分の手から離れそうになったあのとき。
彼女が誰にどんなふうに何を言われたか。
知りたくないけれど―――それを考えるだけで彼は苛々する。



「…悪いけど優しくできないから」



その言葉を聞いた彼女が、彼をしっかりと見上げた。
ほんのりと染まった頬。
潤んだ熱っぽい瞳。

「…っ、あ、あたしは、…あたしは全部入江くんのものだからっ」

彼女は真っ赤な顔で。
真剣に、まっすぐに、彼に必死に訴える。

「だからっ、……お好きにっ…どうぞ…」

最後は聞こえるか聞こえないかくらいの声で小さく呟く。
恥ずかしそうにもじもじと。
どこかその瞳にうっとりとした熱を込めながら、目を逸らす。

甘くて、甘くて。
その、愛しくてたまらなくなる、瞬間。

「―――当然だろ」

先程までのドロドロした感情が、急に収まっていく。
あぁこいつには本当に敵わないなと―――彼はつくづく思い知ったのだった。









( あたまのてっぺんから あしのつまさきまで )











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chan-BBさんへ

まさかchan-BBさんからコメントをいただけるなんて、本当に感激でした☆
早速メール返信ありがとうございました(^^)
とても嬉しかったです!!今からリンク張らせていただきます!
こちらこそよろしくお願いしますww
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嘉村のと

Author:嘉村のと
素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

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