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恋かもしれない35題 27「甘いことば」

2011.10.08 23:10|お題
お題です。
比較的甘い方でしょうか。

目指せ!嫉妬する入江くん!を目指してみました。
全然達成されなかったけど←

  * * *



鼻歌を歌いながら、コーヒーをおいしくいただく。
看護婦は不定期な勤務だから平日の昼間に休みのときだってある。
彼女はのんびりとカフェインの香りを吸い込んで、それからソファに座った。
リモコンを取って、電源を付ける。

毎回見るわけじゃないけれど、昼間は懐かしいドラマがやっている。
今は韓国ドラマも多くて見どころたくさん。
うっかりしているとあっという間に時間が過ぎていて、いつも驚かされる。

今日は義母の紀子はお友達とお食事。
旦那様である直樹が休みだからその予定をいれてくれたらしいが、直樹は出かけてしまった。
琴子もついていくと散々言ったのに、邪険に追い払われたのだ。
本当は彼女が寝坊したのが主な原因なのだけれど。
遅くならないと約束はしてくれたから、彼女はおとなしくお留守番。

「今日は静かだなあ」

つまんないの、と思いながらも。
感情移入しやすい彼女はだんだんドラマにのめり込んで行った。

「ただいま」
「っおかえり!ってなんだ、裕樹くんか」
「なんだってなんだよ!失礼な!」
「裕樹くんならドラマから目を逸らすんじゃなかった」

失礼なことを言いながら再び琴子はドラマに視線を戻す。

「ったく、またこんなの見てんのかよ」
「黙っててよ〜、いいじゃないの、休みなんだし。裕樹くん早いのね」
「テスト期間だし。僕またすぐ出かけるから。ママ帰ってきたら言っておいて」
「うん…へえ?テスト期間なのにでかけるの?ふふふっさては好美ちゃんだなあっ」
「うるさい!お前はドラマ見てるんなら僕に構うなよ!」

ドラマは昔やっていたものの再放送。
裕樹もふと画面を見る。
最近は見なくなった女優が、主役を務めている。

「ああ…かわいそう…」

琴子はぎゅっとこぶしを握りしめながら言った。

「あなたを思っている人が他にもいるんだから!ちゃんと見てあげて…!」

典型的な三角関係のドラマだった。
すれ違う2人。それに絡む1人の若い青年。
真剣に見ている琴子に、裕樹は肩をすくめる。

「お前ってさ、」
「ん〜〜?」
「…恋愛ドラマ好きだよな」
「うん、だって素敵じゃない!まあ入江くんほどの素敵な男性はどこのドラマ見たっていないけどね!」

うっとりとする琴子に、裕樹はため息をつく。
この手のドラマをよく見る琴子の周りに、時折不穏な空気を感じることがあるのだ。
琴子は決して当てつけでドラマを見ているわけではない。ただ単純に面白いから見ているだけなのだが。
ドラマには―――三角関係が多すぎる。

「お前が見てる恋愛ドラマって…どうも、…ワンパターンなんだよな…」

あまり複雑になると彼女には理解できないらしい。
わかりやすくて短銃明快なドラマは、ワンパターン。
それだけなのだ。

「ま…僕には関係ないか。じゃあ出かけるから」
「いってらっしゃーい」

能天気な琴子の声を聞きながら裕樹は玄関へ向かった。








『帰るんですか?』

若い青年が、その女性をじっと見つめて言う。
茶化せない雰囲気で女性は困ったように頷く。

『まだ、一緒にいましょう』
『駄目。もう帰らないと』
『あいつだって、他の女と一緒にいるはずだ』

ばちん、と青年が顔をはたかれる。

「ひゃあ!」

それを見ていた琴子は息を呑む。

『いちいちうるさいわね!私のことは放っておいてちょうだい!』
『―――ほっとけないんだ!』

「そうよ!押せ押せ!」

彼女は身を乗り出す。
山場をどきどきとして見守る。

『わかってるわよ!私が…どんなにバカなことをしてるって。それでも私は…』
『俺なら!俺なら…こんなに悲しませたりしない!』

うんうんうん。
琴子は頷く。

ドラマの女性は青年から逃げだそうとし、腕の中に閉じ込めた。
琴子は(相変わらず初心)真っ赤になりつつ目は逸らさない。
コーヒーに口をつけた、その時だった。

『…あんな奴、やめちまえよ』

ぱっとはわからなかった。
ただ、何かが頭に引っかかったような気がした。

『気になって仕方ない、目が離せないんだ』

「ぶーーーーっけほっ、けほーっ」

琴子は大きくコーヒーでむせてしまった。

言い争う男女。
男の腕から逃れようと必死だ。
だけれど女性は涙をしっかりとためている。
男性は彼女の頭を無理やり固定して、―――キスをしようとした。

慌ててテレビのリモコンを取り、電源を切る。
ドラマ的には、きっと2人はキスをしただろう。
そんな姿彼女にはとても見れなかった。

「…っ、はあ、びっくりしたあ…」

近くにあったふきんで、こぼしたコーヒーをふく。
どきどきと胸が鳴っていて顔が熱い。
ぱたぱたと手で顔を仰ぐ。

「何を今更、だよねえ。過去過去。あー誰もいなくて助かった」
「ふぅん」

安堵のため息をついた彼女の背後から、聞きなれた声がした。
彼女はぴし、と凍りつき、ばっと振り返る。
用事を済ませて帰ってきた直樹がそこには立っていた。

「っ、おおお、お帰り!入江くん!」
「ただいま」

表情一つ変えずに、直樹は彼女を見つめている。
何もやましいことなどないはず…なのに、何故か彼女は背中に汗が流れた。

「い、いつ帰って来たの?」
「今さっき」
「そ…そう、言ってくれればよかったのに」

こ、コーヒー飲む?と聞きながら琴子はキッチンへ逃げようとする。

「琴子」
「な、なに?」
「どうして途中で切ったんだ?俺の声にも気付かないくらい集中してたくせに」
「え、えへへ…そ、その…そろそろ二階に行こうかなって…思って…」
「へえ?」

じり、と彼が彼女に近付く。
彼女はずるずると後ろに下がる。

「俺も上に行くから、コーヒーはいらない」
「そ…そう…」

壁を背中に感じた。
彼が一層近くなる。
吐息がかかりそうな位置で、彼が意地悪く彼女を見つめている。

「琴子」
「はっはい…?」

びくりと肩を揺らして彼女は返事をした。
彼は彼女の手からコーヒーカップを奪い、近くの机に置く。
彼は彼女の耳元に口を寄せて、もう一度彼女に尋ねる。

「なあ、琴子」
「は…はい…」
「どうして?」
「ど、どうしてって、別に、その―――はわっ」

彼の口が彼女の耳を軽く噛んだ。
予期してなかった彼女はびくりと身体を震わせて、変な声を出してしまう。

「どうして?」

もう一度同じセリフを繰り返され、彼女は彼を見る。
彼は首を傾げてふふんと笑った。

「い、入江くん…い、いつ頃からいたの?」
「…ん。聞いてるのは俺なんだけど」

―――もしかして入江くんは全部わかってるじゃあるまいか!
彼女はあたふたとそんなことを考える。

「い、入江くん!べ、別に本当に何でもないんだよっ―――ひゃっ」

Tシャツの上から胸をむにっと揉まれて、再び彼女は変な声を出す。

「へえ?」

にやにやと彼は笑う。
そう見下ろされて、彼女はぞわぞわと恐ろしい気持ちになる。

もうあれは過去の話だ。
たまたまセリフが一緒であったと言うだけでついつい思いだしただけ。
あのセリフを言った本人は既に新しい彼女のような存在もいるわけだし。

「もう過去の話だし!あたしは入江くんが一番だもん!」

彼はふっと表情を緩めて、そしてまた耳元に顔を寄せる。

「お前って本当にバカだな」
「えっ」

墓穴を自分で掘ったことに、彼女はようやくそこで気付いた。
ひょいっと身体が持ち上げられ階段をとんとん彼は登っていく。

「えっあ、え…」
「そう言えば聞くの止めてたんだよな。どんなやり取りがあったのかとか、聞きたくもなかったし」
「な、なな、あの、入江くん…」
「まあ、『過去』のことだし?もう聞いてもいいかもな?」

ぼすん、と彼女はベッドに下ろされる。
体制を立て直そうとする前に、ぎしりとスプリングが揺れた。
暗くなる視界。

彼が彼女を見下ろしている。
彼女は先程のぞわぞわと恐ろしい気持ちと同時に―――今度は、何故か身体が熱くなる。


「悪いけど優しくはできないから」


低い声で静かに告げられた、甘いことば。
きゅんと胸が締め付けられて、お腹のあたりがとても熱くなる。

何故か胸がいっぱいで。
何故かすごくうれしくて。

彼がいれば何もいらない。
彼がこうして自分を思ってくれていることが、どんなに幸せか。
他の人なんて、目に入らないくらい、彼女の心は彼一色。

変かもしれないけど―――捧げられるなら全て捧げたい、と思った。


「…っ、あ、あたしは、…あたしは全部入江くんのものだからっ」


これから生きて行く上でたくさんのひとにまだまだ出会うだろうけど。
彼以上に好きになれるひとなんて絶対にいない。
彼女はそれを彼に伝えたくて、必死に訴える。


「だからっ、……お好きにっ…どうぞ…」


最後は聞こえるか聞こえないかくらいの声で小さく呟く。
恥ずかしそうにもじもじと。


「―――当然だろ」

彼はいつものように冷静に言い放ちながらも、小さく目を細めて笑った。










( あなたで いっぱいに )


















…まだドラマネタでやってしまった(笑)

最後入江くんが笑ったのは、こいつには敵わないと思ったからです。
要するにかわいいと思ったんですねえwきゃー><もえーw
さっきまでは苛々してたけど、彼女のこの言葉で機嫌が直る入江氏…でも何かとかこつけていじめるかと思いますw
嫉妬する入江くんがやっとまともに書けたような気がします。
彼女の記憶の中に他の男とのやりとりがあるだけで不機嫌になっちゃった入江氏(笑)心狭い!ばかうけるw←

…何のやり取りを指しているかは…わかってくださるかと思います。説明は逃げっ!
しかし、とりあえず私はこういうワンパターン小説(最後の行き先が同じw)が多いようです。これも今更。

琴子が「冗談にしてもなぐさめにしても、入江くん以外のひとに抱きしめられたことなんてなかった」ってのが好きです。
だってそれってぜーんぶ入江くんしか知らないんだしwwめっちゃ入江くんは琴子のこと独占してるなーって思います。
(…あ、そう言えばノンちゃんにも抱きしめられてた…じゃ、再会前で…)






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ちぇるしぃさんへ

わーーwwいつもありがとうございます♪
今回は甘さを強調したつもりですが、お気に召していただけたようで嬉しいです☆
嫉妬する入江くんは(琴子ちゃんにつらく当たると悲しくなっちゃいますけど)こういうかたちで表現してくれると本当に格好良いですよねっ!!それを一身に受ける琴子ちゃんがまた…萌え萌えww
きゅんきゅんしていただけて感激です!!
コメントありがとうございましたww

奈々月さんへ

はじめまして(^^)
こんな辺鄙なブログに来てくださってありがとうございます♪
ヤキモチ入江くんっていいですよね!
なかなか書けないのですが、それでようやく書けたこのお話、気に入ってもらえて何よりです☆嬉しいお言葉、ありがとうございますww
これからもがんばりますね!
こちらこそむっつりエヘエヘ笑いながら(怖)書かせていただきますのでよろしくお願いします☆
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素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

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