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恋かもしれない35題 04 「初恋」

2011.10.05 23:19|お題
お題です…。
高校時代です。
なので青い入江くんです。
なーんにも甘くありません(笑)
しかもちょっと変な作品なのでこっそり…。
いろいろすみません><

…あとがきが無駄に長いです。





 *  *  *








『あなたはいつも、わたしを愛してるとおっしゃるわね。
―――それならここまで、この道まで飛び降りてごらんなさい。
もし本当にわたしを愛しているなら』







直樹が自宅に帰ると、家は静まり返っていた。
騒がしい居候の彼女より早く帰宅したらしい。
それに加え、居間には母からの書き置きが残されていた。
弟である裕樹と一緒に買い物に行ったらしいこと。
用がすんだらすぐ帰宅するということ。

彼はそれを一瞥すると二階に上がって行った。


自室に入ったとき、丁度インターホンが鳴った。
すぐ下に降りようかと思ったが、なんとなく彼は自室のカーテンを開ける。
玄関を覗きこむと琴子の姿があった。


「……」

彼はがらっと窓を開けて、「おい」と呼ぶ。
始め彼女はあちこちをきょろきょろしていたが、しばらくしてやっと視線を上に向けた。

「あっ、入江くん!」
「お前何してんだよ」

彼女はえへへと笑ってから声を張り上げた。

「おばさんいないのー?」
「でかけてるぜ。何でお前インターホン押したんだよ」
「うぅ…、あのね、悪いんだけどあたし今日鍵を忘れちゃって―――開けてくれない?」
帰宅したときに内鍵を掛けるのは当り前の習慣。
彼は仕方ねえなと思いながら玄関に向かおうとして、止める。

「おい、琴子」
「ん?なあに?」
「お前、俺のこと好きだって言ったよな?」

彼女は上から見てもはっきりとわかるくらい、頬を染めた。
そしてあたふたとして、それから決意したかのように、強く頷いた。

「うん!」

ぎゅっとこぶしを作って彼女は言う。
彼はそれを見ながら表情ひとつ変えずに口を開く。


「―――じゃあ、登ってこれる?」
「…え?」
「ここの窓開けておくから登ってきたら?…本当に俺のことが好きならな」

彼女はぱちぱちと目をまたたかせ、見開く。
彼が何を言ったのか理解できないようだった。

「入江くん?」
「…なんでもない」

彼は窓から離れて、今度こそ本当に下に降りる。
自分は何をいきなり言いだすのだろう。
ああ―――そうだ。
今日の授業で、あの話を読まされたからかもしれない。
頭痛がする。

ため息をついて、彼は玄関の鍵を開けてやる。

がちゃ、と彼がそれを開けてやったのと、大きな音がしたのは同時だった。












「イタタ…」
「ばかか、お前。本当に登る奴がいるかよ」
「だ、だって、…入江くんが登れって言ったように聞こえて…」

彼女は植木の中に突っ込み、腰をさすっていた。
時間から考えて、たいした高さから落ちたわけではないだろう。
目に見える傷は擦り傷くらいしかないが、あおずみにはきっとしばらく悩まされることだろう。
彼に手を引かれ、彼女はようやく立ちあがった。

「…入江くん、登れって言わなかったの?あたしには確かにそう聞こえて…」

身体に付いた枯れ葉などを取りながら彼女は彼に尋ねた。
彼は小さく鼻を鳴らした。

「…冗談に決まってるだろ。本当にやるとは思わなかった」
「ええ〜…ならあたし落ち損ってこと?」
「だいたい無理に決まってるだろ」
「そ、そんなこと無いよ!あたし昔住んでたアパートで鍵を無くしたとき、窓を伝って中入ったんだよ!しかも二階だったの!」

自慢げに彼女は言い、彼は大きなため息をつく。

「…お前って本当にバカ」

彼が玄関から中に入ると、彼女もちょこちょこと付いてくる。
彼が「大丈夫か」と尋ねれば彼女は嬉しそうに「うん」と笑った。

「よく、そんなことできるな」
「え?」
「俺は絶対そんなことできない」
「そんなあ。入江くんなら天才だからできるよっ!ビルとかも登れるんじゃない?」

彼は彼女を軽く睨む。

「…そういう意味じゃない」

どうしてビルに登らなくてはならないのか、全然理解できない。
そもそも天才だからってそう簡単にビルに登れるはずもないだろうに。

「そうなの?」
「ああ、もう、お前と話していると頭痛がする…いいからこっちに座れ」
「え?」
「いーから」

彼女をその場に座らせると、彼は救急箱を持ってきた。

「い、入江くん手当てしてくれるのっ?」
「放っとくとおふくろがうるさいからな」

とは言え、自分の発言のせいでこうなったようなものなのだ。
責任はある。
彼は彼女の手を取って、軽い擦り傷を何点か確認する。
彼女は頬を染めながら彼の顔をじっと見ている。

「で、でもさ、入江くん、さっき、あの、言ったよね…?」
「何を」
「そ、そのぉ…す、好きなら、登って来い、とか…」
「……」
「や、やっぱ聞き間違い?」

彼はちらりと彼女を見た。
彼女は必死だ。真剣でまっすぐ。
ああ言われて、彼女ならやりかねないとわかっていたのに彼は言ってみた。
わかっていたのに―――試してみた。

「…お前ってさ」
「う、うん」
「俺がやれって言ったら、何でもするの?」
「えっ…?」
「こうなることくらいお前だって予想できただろ」

彼女の膝の上の擦り傷を消毒しながら、彼は言った。
彼女がどんな表情をしているかはわからない。
落ちることくらい予想できただろうし、何より――。

「俺がからかっているって思わなかったのかよ」

もし、彼女の好きな人が彼ではなくて。
仮にその男がすごく悪い人間だとして。
それでも彼女は「好き」ならば好きな人の言うことに従うのだろうか。
自分が想われていないとわかっていたとしても。

「―――ああ言われたら、やるしかないもん」

あたしのプライドなんだよ、と彼女はしっかりとした声で答えた。
強い意志。
今まで何度も驚かされた、彼女の強いこころ。

「…そう」

絆創膏を貼り終わり、彼は顔を上げる。
彼女は満面の笑みで彼を見ている。

「だけどね、やっぱり頑張ってみて良かったなって思うよ!」
「怪我しておいてか?」
「だって入江くんに手当てしてもらえたっ」

本当に嬉しそうに笑う。
こいつばかじゃねーの、と彼は思うけれど。
手当てするんじゃなかった、とは思わない。

自分もいつか彼女の様な気持を知る日が来るのだろうか。
その思いを証明するために高い塀の上から飛びおりることができるような、それくらいの気持ちを。
自分には―――そんな日、一生来ないような気がする。

「理解できないな」

彼はため息をつきながら救急箱を片付けると、再びインターホンが鳴った。
立ちあがろうとした彼女を制して、彼は玄関に向かう。

「はい」
「すみません、世田谷署の者ですが」
「……はい?」

彼は目を丸くして、来客を迎える。
どうして警察がいきなり自宅を訪ねてくるのだろう。

「先程近所の方から通報がありまして…不審人物がお宅の壁をよじ登ろうとしていたとか…」

何か不審な音とかありませんでしたか?と制服のお巡りさんは言う。
彼はぽかんとした後、思わず口を押さえて笑いをこらえた。

「そ、それはっ不審人物じゃありませんーーっ」

真っ赤になった琴子が部屋から飛び出してくる。
それがきっかけで彼はこらえきれずに、くくくっと声を漏らす。

慌てふためく彼女と笑っている彼。
2人を見て目を白黒させている若いお巡りさん。

「あっそう言えば通報内容に、不審人物は斗南高校のスカートを履いているとかなんとか…」
「どっどこに女子高生の格好をした泥棒がいるっていうのよーーっ」

手足をじたばたさせながら、彼女は必死で訴える。彼は相変わらず笑ったままだ。

「お前って本当、すげー」

彼女は真っ赤な顔を彼に向けて、キッと睨む。

「もとは入江くんのせいじゃないのっ!!入江くんが登れば?なんて言うから!」
「冗談だったって言っただろ」

「あの…勘違いなら勘違いで良いので…本官は失礼しますが…」

「それにお前登ってみて良かった、とか言ってたじゃねーか」
「そ、それは、…〜〜っうぅ、そういう意味じゃなくてえっ」

「……お邪魔しました…」

そろそろとお巡りさんは去っていく。
ぎゃあぎゃあ言い合う2人はそれに全く気付かない――いや、存在も忘れているのだから仕方ないが。
この言い争いはこの後もしばらく続き。



―――いつものやり取りで幕を閉じる。



「もう!入江くんの冷血漢!意地悪!最低!」
「その冷血漢が好きなのは誰だよ」

ぐっとセリフに詰まる琴子。
彼はふっと笑う。
何故かこういう彼女を見ると彼は満足する。

彼女は真っ赤になって、彼を睨んで―――それから言い放った。


「あたしだって、いつか入江くんを屋根に登らせてみせるんだからっ」

そしてばたばたと二階へ駆けあがっていく。
彼は彼女を見送って、それからまたくつくつ笑いだす。
「意味わかんねーし」

そもそも何でいきなり屋根になるんだよ?、と思いながら彼は居間へ向かう。
その顔はいつもよりずっと明るく柔らかい。
彼はその事実に気付かない。





―――彼はまだ、恋を知らないけれど。

じわじわと、その『毒』は確実に彼に回っていくのでした。









( きみは まだ 気付いてないだけ )












初恋、ってお題にすごく悩みました。
悩んで悩んで悩んだ結果、最近読んだ文学作品に逃げてみました(笑
とりあえず謝らせて下さい、すみませんでした…。

何だかわかりにくい作品に。
これはこっそりUPすべし文だと思いました…。

入江くんは、絶対琴子が初恋だと思うのですよー。
そんな感じで甘い話が書けたら良かったんですけど無理でした…。

まだ入江くんは気付かないけど、じわじわと恋の毒がまわっています。
本当にこの2人は地道にじわじわ。少しずつ少しずつ。
彼も彼女のためなら何もかも投げ出せる、そんな日が来るんですよっ!という思いを込めて…。

元ネタはツルゲ/ーネフの「はつ恋」です。
この話を知らなくても読めると思います。
「はつ恋」は短編で読みやすいほうなのですが、どうしてもロシア文学は名前が覚えにくくて苦手なのです…。

(以下にあった「はつ恋」についてのネタバレは削除しました)



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ぴくもんさんへ

きゃーー@@!こっこんばんは!
そうです、いつもお伺いさせていただいている、嘉村と申します…。ぴくもんさんがこんなブログに来てくださるなんて…拍手をいただけるなんて…とっても感激です…><
ありがとうございます!!
ツルゲーネフの「初恋」をわざわざ検索してくださって嬉しいです(^^)ピュアでまっすぐで、届かないって思っていても自分の気持ちを証明するために飛び降りちゃう少年は琴子ちゃんとかぶるなあと思って書きました!入江くんはもうすぐそういう琴子ちゃんの気持ちがわかる(自分も初恋というものを知る)日が来るんだよーと気持ちも込めさせていただきました!!高校時代の2人を書けて嬉しかったです☆
拍手本当にありがとうございました!
あ、あとコメは仰ったとおり削除いたしましたので☆
これからもおうかがいさせていただきますので、よろしくおねがいします。



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Author:嘉村のと
素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

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