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恋かもしれない35題 29 「ため息」

2011.09.28 23:00|お題
あと一時間で今日が終わってしまう(滝汗)
とてつもなく焦っております。
コメレスは少し待っていただいて、ひとまず更新をしてみようかと思います。
たいした作品ではないんですけど。

しかし今日は素敵作品がいっぱいあちこちに更新されていてご機嫌でした。

それらを読むと自分の作品が本当にどうしようもなくやっつけに見えて仕方ありませんが…祝いたい気持ちでがんばっていきます。

今回はお題で。
29→31→21と続いていくことになります。

29は「ため息」

今回は珍しく学生時代(結婚前)のお話です。
誕生日はまったく関係ないです…。







 *  *  *



「い、いりえく~~んっ」

彼女は一生懸命走って彼を追った。
なかなか距離は縮まらない。

彼は立ち止まることなく、すたすたと歩いていってしまう。

だけど彼女はさほど気にとめない。
大きな声で彼を呼びながら、足を休ませたりはしない。


「いりえく~~んっ」

なかばタックルでもするような勢いで、彼女は彼に追い付いた。
直樹は不機嫌そうに彼女を振り返る。

「うるせーよ」
「えへへ、ようやく追いついた!」

辺りの人々がちらちらと2人を見て通り過ぎて行く。
元気のよい彼女が呼んでいたのは彼だったんだな、と。
待ってあげてたらいいのに、と赤の他人は思ったかもしれない。

「わー偶然!!ねね、帰り一緒になるなんて珍しいね!」

嬉しいな!とにっこりと笑う。

「お前が後をつけて来たんだろ」
「そ、そんなストーカーみたいなことしてないよ!今後ろ姿が見えたから…」
「あれだけでかい声で人を呼んでおいて何が偶然だ」

冷たく言い返されて、彼女は肩をすくめる。
以前よりこの言い様には慣れたけれども。
つまらなそうに彼女は頬を膨らまして彼を睨む。
けれど彼はそんな彼女など視界に入れてくれなかった。
そして彼女は睨んだ理由もすぐに忘れ、横顔も素敵だなーと感心していた。

はぁ。

彼が小さくため息をついた。
彼をじっと見つめていた彼女はそれに気付く。

そう言えば、何だか今日は朝からいつもと違った。
いつも冷たいけれど、いつもより冷たいような気もする。
いつも静かだけれど、いつもよりなお黙っているような気がする。

それに気付いた琴子は急に胸が苦しくなる。
手を伸ばして、彼の服の裾を掴んだ。

「入江くん!」
「なに?」

「―――何か悩んでるの?」

彼が彼女を見た。
とてもとても不機嫌そうな表情で。
いつもより眉間のしわ三割増しで、彼女を睨んだ。

「何でだよ」
「…えっ…いや、その…」

まさかため息ついてたから、とも言えず、彼女はもごもごと言葉を濁す。
彼はそんな彼女からすぐに視線を前に戻してしまった。
彼の視界から逃れられたことにほっとする半面、残念でもあった。

「別に、何も」
「…あ、そう、だよね…」

思いついたらすぐに口に出してしまう癖を恨む。
もう少し考えてから話さないと。いつもそう思っているのに。

「で、でもね、入江くん!あたしで良かったら相談乗るから!入江くんのためにできることがあるならあたし―――」
「あっそ」

彼は呆れたように息を吐いた。
まったく当てにされていないことがわかる。
彼女はそれは不満だったけれど、でも掴んだ服の裾はふり払われなかった。
それだけで、少しだけほっとした。

「お前に相談したら解決するもんもしなくなりそうだよ」
「ひ、ひどいっ」

そりゃ彼なら彼女の助けなんていらないだろう。
それでも彼が悩んだり苦しんだりするのなら助けになれたらいいと思う。
自分がいかに無力だとわかっていても。

2人の間に沈黙が流れる。
彼の歩幅についていこうと必死で彼女は早足で歩いていた。
ちらちらと彼を窺いながら。



いつもの坂道の手前で、ふいに彼女は後ろを振り返った。

「あっ、入江くん!」
「なんだよ」
「見て見て!すごーい、綺麗な夕日!」

彼女は彼の服の裾を掴んでいた手を離して、その夕焼け空を指差す。
彼はその彼女の指の先を見る。

真っ赤に染まった空。

「きれーだね!明日はきっと晴れだね!」

琴子は夕日から目を逸らさずに、満面の笑顔を見せる。
何の意図も無く、何の思惑も無く。彼女はただそう思ったから笑う。



羨ましいと、彼は少し思う。



「そうだな」

小さくそう言って、彼はすたすたと歩き始める。
彼女は慌てて彼を追う。

「ねえ、入江くん!」
「なんだよ」
「忘れないでね、さっきのこと」
「は?」


「あたしは、どんなときでも入江くんの味方だよっ、てこと!」


その声を背中に受けながら彼は先程の琴子の笑顔を思い出す。
夕日がきれいだと言って、はしゃぐ幼い彼女。
ありふれた世界の中。

ちっぽけすぎる存在。


―――どうしてだろうか。


彼は立ち止まって、彼女を振り返る。
また、あの綺麗な夕日が彼の視界に映る。
そして一生懸命追ってくる彼女も、彼の視界に入る。

彼女はやっぱり嬉しそうに笑っていた。


「ばぁか」


―――さっきよりも心がずっと軽くなったような気がした。






( どんな言葉よりも 効果があるモノ )













某曲を聞きながら書きました。
まだ結婚以前の2人です。

もちろん効果があるのは琴子ちゃんの存在って話。あ、琴子ちゃんの笑顔でもいいんです。
最後に琴子ちゃんが笑っているのは入江くんが振り返ってくれたからなんです。

とりあえずそういう2人が大好きなんです(笑)しつこい?




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Author:嘉村のと
素敵なイタキス二次創作に憧れて、うっかり立ち上げてみたブログです。
イリコトってすごく難しいのですが、「別人だよ」と言いながらもがんばって妄想世界へこきだしていこうかと思います。

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